歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド

歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド
Top診断力てすと > 2019年9月号「口腔粘膜の紫斑や出血」

診断力てすと  診断力てすと

2019年9月号 「口腔粘膜の紫斑や出血」
1.オスラー病

 オスラー病(Osler-Weber-Rendu Syn-drome)は遺伝性出血性毛細血管拡張症の別名で、皮膚、粘膜および内部臓器の多発性毛細血管拡張と反復する出血を特徴とする常染色体優性遺伝性疾患である。原因遺伝子として、TGFβファミリー受容体であるEndoglinとactivin receptor-like kinase1(ALK-1)の2つの遺伝子があきらかになっている。
 診断基準は、①繰り返す鼻出血、②皮膚や粘膜の毛細血管拡張(口腔、指、鼻など)、③肺・脳・消化管などの動静脈奇形、④一親等以内の同一疾患、以上4項目のうち3項目以上で確診、2項目で疑診、1項目では否定的、である。難病疾患に指定されており、わが国には1万人以上の患者がいると推定されているが、症状が多岐にわたるために診断が困難といわれている。また、脳梗塞、脳膿瘍、呼吸困難、出血性ショックなど、重大な合併症を来すことがあるため注意が必要である。根本的な治療法はなく、出血に対する対症療法が主体である。
 本症例は、鼻出血を繰り返すたびに耳鼻科や内科を受診していたが診断には至らず、舌からの出血を繰り返すという主訴で内科から紹介された。筆者はオスラー病患者の診察経験はなかったが、教科書に記載されている症例写真の記憶があり、その特徴的な所見からオスラー病を疑い精査を進めた(教科書の写真に酷似した所見であった)。鼻出血の既往や家族歴について問診すると、以前から鼻出血を繰り返していたこと、父親が同一疾患であったこと、患者の弟や子どもも鼻出血を繰り返していたことがわかった。当院内科で全身精査を行ったところ、胃・十二指腸・上部小腸に毛細血管拡張を認め(図3)、出血のリスクがあるため焼灼術を受けた。当科では、舌病変のうち出血を繰り返す部分のみを切除した(図4)。
 頻繁に口腔内出血を繰り返す患者では血液疾患が潜んでいることがあり、歯科医師にその知識があれば歯科受診が診断確定の契機になることがあるので、歯科医師の役割は大きい。オスラー病は、本稿で供覧したような特徴的な所見を呈するので、ぜひ記憶しておいていただきたい。

図3 胃体部の紫斑と出血
図3 胃体部の紫斑と出血
図4 舌出血部の切除
図4 舌出血部の切除

歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド

<<一覧へ戻る
歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド
歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド