2019年08月号 「急速に増大した口腔内腫瘤」
山中茂樹 Shigeki YAMANAKA 中尾一祐 Kazumasa NAKAO
京都大学大学院医学研究科
感覚運動系外科学講座 口腔外科学分野
感覚運動系外科学講座 口腔外科学分野
図1 初診時の口腔内写真
図2 初診時のパノラマX線写真
患者: | 37歳、男性 |
主訴: | 右側上顎歯肉の腫瘤 |
現病歴: | 2018年1月に多発転移した直腸がんの化学療法を目的に入院。口腔ケア、口腔感染源の精査目的に当科を紹介され受診した。口腔ケア中に、急速に増大する口腔内の腫瘤を認めた。これまで、口腔内に同様の症状を認めた既往はなかった。 |
既往歴: | 直腸がん(肝転移、肺転移、リンパ節転移を認めた) |
全身所見: | 体格中等度、栄養状態は良好。発熱などの全身症状は認めなかった。 |
口腔外所見: | 顔貌は左右対称、頸部にリンパ節腫大は認めなかった。 |
口腔内所見; | 口蓋歯肉に、拇指頭大で有茎性、表面白色のびらんを伴う腫瘤を認めた(図1)。硬結は触知しなかった。 |
画像所見; | パノラマX線写真(図2)にて、周囲骨に骨吸収など、あきらかな異常所見を認めなかった。 |
細胞診所見; | 出血性で多数の細菌と扁平上皮細胞が採取されており、軽度の核腫大と輝度の高い角化細胞を少数認めた。あきらかな悪性所見は認めなかった。 |
Q | 最も疑われる疾患名は? |
1.歯肉炎 | |
2.膿原性肉芽腫 | |
3.歯肉がん | |
4.線維腫 |