A | 2.膿原性肉芽腫 |
処置および経過:歯肉がんを疑い擦過細胞診を実施したが悪性所見を認めなかったため、臨床診断を膿原性肉芽腫として局所麻酔下に切除生検を行った。周囲の健常組織を含めて骨膜下で切除し、病変と周囲組織との癒着がないことを確認した。切除部分の歯槽骨に粗造感や異常所見は認められず、切除面は正常な結合組織であった。術後1年以上経過したが、再発なく経過している。
病理組織学的所見:小葉状毛細血管の増生と炎症細胞の浸潤が認められ、一部では血管拡張や線維化を認めた。多くの上皮は肥厚し、釘脚の延長などを認めたが、異型性は認めなかった(図3、4)。
疾患の概要:膿原性肉芽腫は皮膚や粘膜に発生する肉芽腫性の隆起性病変であり、臨床所見としては孤立性で球状ないし茸状の無痛性、有茎性腫瘤が一般的で、口腔領域では歯肉、口唇、舌などが好発部位とされている。
発症年齢は幼児から高齢者に認められ、その成因については種々述べられているが、一定の見解は得られていない。口腔内の局所的因子としては、小外傷や感染性刺激が考えられており、全身的因子の関与の可能性も報告されている。
病理組織学的には炎症性細胞浸潤を伴う肉芽腫性の病変で、血管内皮細胞の増生を示す小葉状の毛細血管の増殖が特徴である。上皮は潰瘍形成や外傷によって欠損しているものや、重層扁平上皮に被われている場合もあり、臨床形態によってさまざまである。臨床的に本疾患は、血管腫、線維腫、エプーリス、そして悪性腫瘍などとの鑑別が重要といわれている。急速に増大するものは悪性腫瘍との鑑別が問題となるため、病理組織学的検索は必須である。
膿原性肉芽腫の治療は、周囲の健全組織を含めた切除が一般的である。有茎性病変を認める場合が多いため切除は比較的容易であるが、切除が不十分であると再発を認めることもあり、切除後も経過観察が必要である。また、本症例のように全身疾患のある場合など、主科に対診のもと適切なタイミングで切除を行う必要がある症例も多く、大学病院などの専門医療機関への紹介が推奨される。
- 1)赤坂庸子,鈴木英正,山口和郎,他:口腔に生じた膿原性肉芽腫20例の臨床的検討.日口粘膜誌,7:20-25,2001.
- 2)仙田順子,島原政司,古宮雅子,他:悪性腫瘍が疑われた膿原性肉芽腫の1例.日口診誌,15:98-102,2002.
- 3)山下雅子,神部芳則,仙名あかね,他:小児に生じた膿原性肉芽腫の2例ならびに当科における臨床的検討.日口内誌,18:8-13,2012.
図3 病理組織像(弱拡大)
図4 病理組織像(強拡大)
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