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2018年12月号「抜歯窩治癒不全」
3.下顎骨骨髄炎

急性顎骨骨髄炎:炎症の場の主体が顎骨の骨髄内にあるもので、局所の激痛、発熱などの強い炎症症状がみられる。経時的変化により、4期に分類されている。
■第1期(初期):骨髄炎の始まりで、原因歯の打診痛などとともに拍動性自発痛が生じる。全身倦怠感や発熱なども生じる。
■第2期(進行期):急性炎症症状は増悪し、隣在歯も強い打診痛を示し(弓倉症状)、炎症が下顎管周囲に波及すると、患側下唇部の知覚鈍麻を生じる(Vincent症状)。
■第3期(腐骨形成期):急性炎症症状は鎮静化するが、骨膜化膿瘍を形成する。また、腐骨を形成することがある。
■第4期(腐骨分離期):急性症状は消失し、瘻孔から排膿する。また、腐骨の周囲健全骨からの分離が進行する。
上顎と比較し、下顎のほうが罹患率は高い傾向にあるといわれている。
慢性顎骨骨髄炎:急性骨髄炎から継発することも多いが、当初から慢性の経過を辿るものもある。慢性化膿性顎骨骨髄炎と、慢性硬化性顎骨骨髄炎に分類される。
 慢性化膿性骨髄炎は、急性化膿性骨髄炎が不完全な治療により根治せず移行したものが多い。腫脹、疼痛は軽度であるが、瘻孔から排膿を認める。X線写真では骨吸収像を認める。慢性硬化性骨髄炎は顎骨骨髄炎が慢性的に緩慢な経過をとり、骨硬化を示す。画像検査では、骨硬化や不規則なすりガラス様の不透過像を呈する。
骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ):ビスホスホネート製剤や抗RANKL製剤などの骨吸収抑制薬、さらには血管新生阻害薬使用の副作用として、顎骨壊死を来す。「顎骨壊死検討委員会によるポジションペーパー2016」は、「基本的に歯科治療前のビスホスホネート製剤の休薬は行わず、感染対策を徹底的に行うことで顎骨壊死を予防すべきである。しかし、骨吸収抑制薬投与を4年以上受けている場合、あるいは顎骨壊死のリスク因子を有する骨粗鬆症患者に侵襲的歯科治療を行う場合には、2ヵ月前後の休薬を主治医と協議、検討すること」としている。いずれにしても、骨粗鬆症患者の薬物治療のメリットとARONJのリスクを考慮すべきである。
 本症例は乳がんの骨転移に対してビスホスホネート製剤の使用が既往にあり、ARONJとの診断を下している。治療経過は、局所洗浄と抗菌薬投与を行った結果、腐骨が分離し、治癒した。
病理組織学的所見:壊死した層状骨を認め、骨梁間に細菌塊を認める(図4)。

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>図4 下顎骨骨髄炎の病理組織写真
図4 下顎骨骨髄炎の病理組織写真

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