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TopQ&A法律 > 成年年齢の引き下げによって何が変わるか(2022年3月号)
Q&A
法律(2022年3月号)
Q成年年齢の引き下げによって何が変わるか
●民法改正によって、2022年4月1日から成年年齢が20歳から18歳に変わります。この引き下げによって、どのようなことが変わるのでしょうか。また、当院では20歳未満の患者さんへの治療時に、保護者に同意書などを書いてもらっていますが、4月1日以降は18歳未満に引き下げて問題ないのでしょうか。
── 愛知県・O歯科医院
A
日本における成年年齢は、明治9年以来、20歳とされていました。もっとも、近年では公職選挙法の選挙権年齢などが18歳と定められました。また、世界的にも成年年齢を18歳とするのが主流です。このような政策および世界的趨勢を踏まえ、私法関係の基本法である民法においても、18歳以上の人を大人として取り扱うこととなりました。
 成年年齢に係る改正民法の規定は、2022年4月1日から施行されます。つまり、同日の時点で18歳以上、20歳未満の人(2002年4月2日生〜2004年4月1日生までの人)は、2022年4月1日に成年に達することになります。2004年4月2日生以降の方は、18歳の誕生日に成年に達することになります。
 民法の成年年齢には、「行為能力を有する年齢」、「親権に服さなくなる年齢」という2つの法的意味があります。「行為能力」とは、契約などの法律行為を単独で有効に行うことができる能力をいいます。つまり、成年であれば、たとえばスマートフォンの購入や使用契約の締結、アパートの賃借、ローンの利用などが単独でできるようになります。
 もっとも、酒やたばこに関する年齢制限については、民法とは別の法律である、未成年者飲酒禁止法や未成年者喫煙禁止法によって飲酒・喫煙が禁止される年齢が規定されています。これらの法律上、飲酒・喫煙が可能となる年齢は20歳のまま維持されます。また、公営競技(競馬、競輪、オートレース、モーターボート競走)の年齢制限についても20歳のまま維持されます。
 歯科診療契約についてですが、他の契約と同様、2022年4月1日以降は、18歳以上の患者さんであれば法的には親権者の同意なく診療契約を締結することが可能になります。
 もっとも、歯科診療契約においては、患者さんが自身の症状、治療内容、治療によるメリット・デメリットおよび費用などを正しく理解していることが必要です。換言すれば、歯科医師には、個々の患者さんの理解力に応じた説明が求められます。説明が不十分・不適切と評価された場合、診療契約が取り消されたり、場合によっては損害賠償を請求されることもあり得ます。そのため、患者さんが18歳に達していたとしても、理解力が不十分と考えられる場合には、親権者にも説明し、そして同意を得るなどの対策が必要なケースもあると思われます。
 このような個別具体的な理解力の判断を避けたいのであれば、2022年4月1日以降においても、20歳未満の患者さんについては、一律に親権者に対する説明を実施し、親権者からの同意を得る運用としてもよいかと思います。
 また、比較的高額になる自費診療については、金額に起因するトラブルに発展する可能性があります。そのため、成人であっても若年者に対する自費診療については、親権者に対する説明と親権者からの同意の取得を実施することがより望ましいといえます。
 そもそも、自費診療費の支払いに関する資力・収入が十分な18、19歳の患者さんは多くないと思います。そこで、診療費を後払いとする場合、親権者の説明・同意とともに、親権者に支払いを約束してもらうこととすれば、診療費の未払いリスクを減少させることができます。

井上雅弘
銀座誠和法律事務所

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