鼻うがいの効果と正しい実施方法
●鼻うがいに興味があります。この効果はどのくらいあるのでしょうか。また、正しい実施方法を教えてください。
──香川県・T歯科医院
1.鼻うがいの重要性
鼻うがいは鼻呼吸を促し、加温加湿といった鼻の機能の維持・向上を主目的として行います。海外では、鼻うがいを上気道炎の予防や副鼻腔炎の補助療法として取り入れている医師も多く、家庭療法として推奨されています。また、汚染飛沫が飛ぶ治療では、医療者の感染予防としても期待されています。
日本でも花粉症の対策として40%を超える耳鼻咽喉科・アレルギー科医師が鼻うがいを推奨しています。歯科医院での鼻うがいの励行により、従事するスタッフはもちろん、通院患者もコロナ禍で健康を保てると考えます。
鼻うがいの効果は大きく3つの機序によって発揮されます(表1)。線毛は上皮細胞表面の極小の毛で10〜15Hzの波打つ動きによって異物を排除しますが、低温・乾燥によって動きが悪化し、あまりに乾燥が続くと線毛は消失し、クリアランスが大きく損なわれます。鼻うがいは、この働きを保つ効果があります。さらに鼻粘膜上皮はCl−イオンの供給により次亜塩素酸を出すことがわかっています。この産生は、Cl−イオン濃度依存性であり、より高濃度の食塩水を使用すると鼻うがいの効果が高まります。
鼻うがいにはさまざまな方法があり、容量、圧、溶液などでそれぞれ違いがあります。正しい方法とされるものはなく、状況に応じて使い分けることが大切です。小児に5mL程度の極少量の鼻うがいをさせるだけで、上気道炎の改善が早まったり、病欠が減ることがわかっています。
一方、50mL前後の中等量、200mLを超える大容量だと洗浄効果はさらに高まりますが、使い勝手の面では劣るでしょう。圧をかけて鼻腔内にうがい液を流し込むのか(高圧式)、落下に任せて鼻腔内を灌流させるのか(低圧式)、うがい液を吸い込むのか(陰圧式)といった違い、あるいはうがい液にも等張生理食塩水、高張食塩水、線毛機能を維持するといわれる重曹を少量加えるなど、さまざまなバリエーションがあります。
以上を踏まえて、自分のライフスタイルに合わせた鼻うがいを選択するとよいでしょう。鼻うがいに関する書籍もありますので、参考にしてください(図1)。
2.鼻うがいの実施方法
具体的な実施方法について、簡便な絞り出すスクイズタイプキットのもので説明します。使用に際しては、まず、ボトルに洗浄粉末を投入し、人肌程度に温めた水道水(ただし蒸留水や滅菌水の使用が最もよい)を注いで、しっかり混和します。「あー」と声を出しながら鼻孔にうがい液の流出口をぴったりと合わせ、ボトルを絞り込みます。
これがうまくいくと、反対側の鼻孔から洗浄液が流出します。鼻中隔弯曲症などで極端に鼻道通気性が悪い場合、無理に押し込まず、口から流れ出るようにします。使用後は鼻うがい器具や周囲の清潔を十分保つよう留意します。
急性中耳炎で加療中、誤嚥・嚥下障害、声帯麻痺の場合などでは、鼻前庭を洗う程度にするだけにします。当初は怖さがあっても無痛のため、思ったよりも抵抗なく実施できます。この機会にご自分の健康のためにも、鼻うがいを取り入れてはいかがでしょうか。
図1 堀田 修『ウイルスを寄せつけない!痛くない鼻うがい』(KADOKAWA)
【参考文献】
鼻うがいは鼻呼吸を促し、加温加湿といった鼻の機能の維持・向上を主目的として行います。海外では、鼻うがいを上気道炎の予防や副鼻腔炎の補助療法として取り入れている医師も多く、家庭療法として推奨されています。また、汚染飛沫が飛ぶ治療では、医療者の感染予防としても期待されています。
日本でも花粉症の対策として40%を超える耳鼻咽喉科・アレルギー科医師が鼻うがいを推奨しています。歯科医院での鼻うがいの励行により、従事するスタッフはもちろん、通院患者もコロナ禍で健康を保てると考えます。
鼻うがいの効果は大きく3つの機序によって発揮されます(表1)。線毛は上皮細胞表面の極小の毛で10〜15Hzの波打つ動きによって異物を排除しますが、低温・乾燥によって動きが悪化し、あまりに乾燥が続くと線毛は消失し、クリアランスが大きく損なわれます。鼻うがいは、この働きを保つ効果があります。さらに鼻粘膜上皮はCl−イオンの供給により次亜塩素酸を出すことがわかっています。この産生は、Cl−イオン濃度依存性であり、より高濃度の食塩水を使用すると鼻うがいの効果が高まります。
鼻うがいにはさまざまな方法があり、容量、圧、溶液などでそれぞれ違いがあります。正しい方法とされるものはなく、状況に応じて使い分けることが大切です。小児に5mL程度の極少量の鼻うがいをさせるだけで、上気道炎の改善が早まったり、病欠が減ることがわかっています。
一方、50mL前後の中等量、200mLを超える大容量だと洗浄効果はさらに高まりますが、使い勝手の面では劣るでしょう。圧をかけて鼻腔内にうがい液を流し込むのか(高圧式)、落下に任せて鼻腔内を灌流させるのか(低圧式)、うがい液を吸い込むのか(陰圧式)といった違い、あるいはうがい液にも等張生理食塩水、高張食塩水、線毛機能を維持するといわれる重曹を少量加えるなど、さまざまなバリエーションがあります。
以上を踏まえて、自分のライフスタイルに合わせた鼻うがいを選択するとよいでしょう。鼻うがいに関する書籍もありますので、参考にしてください(図1)。
2.鼻うがいの実施方法
具体的な実施方法について、簡便な絞り出すスクイズタイプキットのもので説明します。使用に際しては、まず、ボトルに洗浄粉末を投入し、人肌程度に温めた水道水(ただし蒸留水や滅菌水の使用が最もよい)を注いで、しっかり混和します。「あー」と声を出しながら鼻孔にうがい液の流出口をぴったりと合わせ、ボトルを絞り込みます。
これがうまくいくと、反対側の鼻孔から洗浄液が流出します。鼻中隔弯曲症などで極端に鼻道通気性が悪い場合、無理に押し込まず、口から流れ出るようにします。使用後は鼻うがい器具や周囲の清潔を十分保つよう留意します。
急性中耳炎で加療中、誤嚥・嚥下障害、声帯麻痺の場合などでは、鼻前庭を洗う程度にするだけにします。当初は怖さがあっても無痛のため、思ったよりも抵抗なく実施できます。この機会にご自分の健康のためにも、鼻うがいを取り入れてはいかがでしょうか。
表(1) 鼻うがいのおもな効果
病原体、分泌物、炎症物質の機械的洗浄・除去 |
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粘膜線毛クリアランスの向上 |
上皮細胞による次亜塩素酸産生1) |
図1 堀田 修『ウイルスを寄せつけない!痛くない鼻うがい』(KADOKAWA)
- 1)Sandeep Ramalingam, et al.: Antiviral innate immune response in non-myeloid cells is augmented by chloride ions via an increase in intracellular hypochlorous acid levels. Scientific Reports, 8(1): 2018.
今井一彰
●福岡県・みらいクリニック