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Q&A
歯科一般 (2021年11月号)
Q BP系薬剤を服用している患者へのSRP時の注意点
●当院には高齢の患者が多く来院します。そこで、ビスホスフォネート(BP)系薬剤を服用している患者にSRPを行う際、注意点があれば教えてください。
──福岡県・U歯科
A
可能であれば、ビスホスフォネート(BP)系薬剤の服用前に、歯科治療を行っておくことが望ましいです。しかし、すでに服用を開始している患者に、ある程度の侵襲を伴う歯科治療を行う場合は、当該薬剤を含めたARONJ(anti-resorptive agents-related osteonecrosis of the jaw)のリスクについて注意が必要です(図1)1)

図1 骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016
図1 骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理:
顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016

 現在、侵襲的歯科治療前の休薬について、統一した見解は得られていません1)。日本歯周病学会「歯周治療の指針2015」2)には、「処置を行う際は、主治医に問い合わせ、連携して行う」と記載されています。実際には、当該薬剤を処方しているかかりつけ医に連絡し、骨粗鬆症などの対象疾患の状態や治療状況について確認します。同時に、今後、歯科で予定している治療の内容について情報提供を行います。このように、医科への対診結果を踏まえて実際の歯周治療を行いますが、基本的に歯科治療は、BP系薬剤を休薬せずに侵襲的治療をできるかぎり避けて行うとされています1)
 したがって、歯周治療は歯周基本治療を中心に行います。スケーリング・ルートプレーニング(SRP)は、根面にアプローチする治療法ですので、比較的リスクは低いと思われますが、実施にあたっては、患者への十分な説明を行い、次のような点に留意します。

➀プラークコントロールを徹底し、歯肉の炎症を可及的に軽減しておく
➁実際のSRPでは、歯肉縁下のキュレット型スケーラーなどの操作は注意深く行い、ポケット上皮、接合上皮を可及的に傷つけないようにする(図2)
➂術後の洗浄(滅菌生理食塩水などを使用)を丁寧に行う
➃通常より術後の来院間隔を短くし、歯周組織の治癒を慎重に確認する
図2 歯肉縁下のキュレット型スケーラーなどによる操作は注意深く行う
図2 歯肉縁下のキュレット型スケーラーなどによる操作は注意深く行う


 BP系薬剤が歯周組織に及ぼす影響については、これまでさまざまな研究が行われてきました。しかし、まだあきらかにされていない点も多く3)、BPや関連薬剤を服用している歯周病患者への治療のあり方も含めて、今後、さらなる検討が必要です。


【参考文献】
  1. 1)顎骨壊死検討委員会:骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016.
  2. 2)日本歯周病学会:歯周治療の指針2015.
  3. 3)Meric P, Gurlek O: Periodontal diseases/treatment and bisphosphonates. Current Oral Health Reports, 5: 1-6, 2018.

齋藤 淳
東京歯科大学 歯周病学講座

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