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Q&A
歯科一般 (2021年10月号)
Q ラバー製の歯間ブラシの有用性は?
●近ごろ、ラバー製の歯間ブラシをよく見かけますが、ワイヤー製のものよりも優れているのでしょうか。
──福岡県・K歯科
A
コンビニやスーパーなどの日用品コーナーで、いろいろな口腔衛生器具を目にします。そのなかでラバー製の歯間ブラシが気になった読者も多いかと思います。ラバーなら軟らかく、歯へのダメージは少なそうです。しかし、いままで使ったことがないものに関しては、少々不安があります。そういうときはやはりエビデンスベースで考えてみましょう。
 Pubmedを用いて、「interdental brush, rubber」で検索すると14編の論文がヒットし、そのなかでワイヤー製のものと比較されている臨床研究は3編、システマティックレビューが1編でした。誌面の都合上、詳しく解説できませんので、簡単に解説します。
 まずはドイツで行われた研究です1)。ドイツ製の「Fuchs」というラバー製の歯間ブラシが使われましたが、外観は日本で売っているものによく似ています。本研究では、17〜72歳までの39名の被験者が対象となりました。研究はクロスオーバーデザインで行われ、ラバー製、または通常の歯間ブラシを用いて4週間ずつブラッシングを行いました。その結果、プラークと出血については差異がみられませんでしたが、アンケートでは被験者がラバー製を好む結果がみられました。
 続いてイタリアの研究です2)。60人の健康歯肉をもつ平均18歳以上の被験者を以下の4つのグループ(➀歯ブラシのみ使用、➁歯ブラシとデンタルフロスを使用、➂歯ブラシと通常の歯間ブラシを使用、➃歯ブラシとラバー製の歯間ブラシを使用)に振り分けて28日間、ブラッシングしてもらいました。
 使われたラバー製の歯間ブラシはサンスター製のものでした。結果、ラバー製の歯間ブラシの使用により、全顎と歯間部のみのプラークスコアおよび出血スコアが有意に改善しました。また、歯間部のみのプラークスコアおよび出血スコアは、歯間ブラシを使用した2つのグループで歯ブラシのみのグループと比較して高い改善効果がみられました。しかし、ラバー製と従来の歯間ブラシとの間には有意差はみられませんでした。
 次はオランダの研究です3)。この研究では通常の歯間ブラシとラバー製のものの効果がスプリットマウスデザインによって比較されました。対象となったのは18〜35歳までの歯間ブラシが臼歯部隣接面にフィットする被験者でした。ここで使われたラバー製の歯間ブラシもサンスター製で、カーブが付いているタイプのものでした。そして、21日間すべての口腔清掃を中断し、実験的歯肉炎が形成されました。その後4週間、患者は下顎の片側をラバー製で、反対側を従来の歯間ブラシを使用して清掃しました。
 その結果、器具の到達が可能だった部位では、ラバー製の歯間ブラシを使った場合に、通常の歯間ブラシよりも歯肉出血スコアが有意に改善しました。また、プラークスコアの改善程度には差がなく、歯肉の摩耗はラバー製のほうが少ないという結果が得られました。
 しかし、システマティックレビュー(プレプリント)4)では、論文のクオリティを評価したうえで、ラバー製の歯間ブラシの歯肉炎およびプラーク減少効果を確証する根拠は、「弱い」か「とても弱い」と結論づけられました。その一方で、安全性と研究参加者の多くが好む傾向についてはエビデンスがあるとされました。

 以上をまとめると、清掃効果についてはラバー製のものほうが優れているという根拠はみられませんでしたが、歯肉へのダメージや使用感については優れている可能性があるといえます。しかし、上記の研究は歯周炎患者を対象としたものではなく、まだ長期的なデータも得られていません。先の結論は比較的若い健常な歯肉を有する人に限っていえることであることに注意してください。

【参考文献】
  1. 1)Abouassi T, Woelber JP, Holst K, Stampf S, Doerfer CE, Hellwig E, Ratka-Kruger P: Clinical efficacy and patients' acceptance of a rubber interdental bristle. A randomized controlled trial. Clin Oral Investig, 18(7): 1873-1880, 2014. doi: 10.1007/s00784-013-1164-3.
  2. 2)Hennequin-Hoenderdos NL, van der Sluijs E, van der Weijden GA, Slot DE: Efficacy of a rubber bristles interdental cleaner compared to an interdental brush on dental plaque, gingival bleeding and gingival abrasion: A randomized clinical trial. Int J Dent Hyg, 16(3): 380-388, 2018. doi: 10.1111/idh.12316. Epub 2017 Sep 26.
  3. 3)Graziani F, Palazzolo A, Gennai S, Karapetsa D, Giuca MR, Cei S, Filice N, Petrini M, Nisi M: Interdental plaque reduction after use of different devices in young subjects with intact papilla: A randomized clinical trial. Int J Dent Hyg, 16(3):389-396, 2018. doi: 10.1111/idh.12318. Epub 2017 Oct 2.
  4. 4)van der Weijden F, Slot DE, van der Sluijs E, Hennequin-Hoenderdos NL: The efficacy of a rubber bristles interdental cleaner on parameters of oral soft tissue health-a systematic review. Int J Dent Hyg. 2021. doi: 10.1111/idh.12492. Online ahead of print.

関野 愉
日本歯科大学生命歯学部 歯周病学講座

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