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TopQ&A小児歯科 > 子どもの口臭の原因は?(2020年1月号)
Q&A
小児歯科 (2020年1月号)
Q 子どもの口臭の原因は?
●「子どもの口臭が気になる」と、患児の親から訴えがありました。どのような原因が考えられますか? また、口腔機能発達不全症や食生活などの観点から、口臭の原因になるようなことがありましたら教えてください。
──青森県・O歯科医院
A
 子どもの場合は、乳歯が生え始める1歳6ヵ月未満の「乳児期」と、乳歯列が完成し永久歯列への転換が始まって就学するまでの「幼児期」(生後1〜6年)、永久歯列が形成されていく「学童期」(生後6〜12年)、それぞれの時期で原因を考える必要があります。
 乳児期〜幼児期(3歳まで)の口臭は、乳児期は身体機能のみならず、基本的な口腔生理機能が未熟なうえに、離乳食などの流動食が多く、自発的な口腔ケアができないことからくる口腔内環境の悪化(pHの低下)が原因となることが多いです。また免疫力も低く、とりわけウイルス性の疾患に罹患しやすいので、一時的に病的口臭を引き起こすことがあります。そのため、保護者による適切な口腔ケアや感染予防が不可欠となります。2歳以降は歯ブラシを持たせて歯を磨く習慣(保護者による仕上げ磨きは必要)を身につけさせ、鼻呼吸習慣の確立や口輪筋や舌筋、顎の発達を促すためにおしゃぶりが有効です(しかし、よい歯並びのためには、2歳ごろまでにおしゃぶりをやめるよう、日本小児歯科学会では推奨されています)。また、十分なスキンシップや呼びかけなどのコミュニケーションは、口腔機能を阻害するストレス緩和的効果があります。
 幼児期(3歳以降)から学童期の病的口臭の原因としては、う蝕による歯科的問題と、耳鼻咽喉科的な慢性的炎症が原因となることが多く、これらの背景として、未熟な歯磨き習慣、食生活習慣、咀嚼習慣、口呼吸習慣、およびアレルギーがあります。花粉症をはじめ食物アレルギー、ハウスダストアレルギーなどのアレルギーは、慢性的な鼻詰まりから口呼吸に陥りやすいです。後鼻漏などが原因である咽頭部由来の口臭を引き起こしやすく、適切な専門的ケアを受けるのが望ましいです。さらに、治療に使用される抗ヒスタミン剤の連用は、口喝を招き口腔乾燥を引き起こすので口臭の原因となります。したがって、水の定期的摂取も口腔乾燥に対するセルフケアとして必要になります。
 最近の成人の傾向としてみられる咀嚼回数の低下(早食い)、唾液分泌機能の低下などは、幼児期・学童期の食生活習慣で確立されるため、咀嚼力が上がる食生活習慣(和食や硬めの具材を食べるなど)を身につけることも重要となります。咀嚼力の低下は食物残渣が停滞することで口腔内pHの低下を招いたり、口腔内の恒常性維持機能が低下(自浄性の低下)する結果、口臭の原因となることが多いのです。
 今日の問題として、以前の学童に比べて遊びのスタイルが変化し、外で体を使って遊ぶより、室内で長時間スマホを見たりゲーム機による遊びが主流となり、常に下向きの目線で過ごす時間が増えてきています。下向きの姿勢は無意識に臼歯を噛みしめ舌が動かなくなる結果、嚥下が難しくなり、唾液を分泌し飲み込むこと(嚥下)の連続によって維持されている安静時の新鮮な唾液の流れが悪くなります。そのことから自浄性が低下し、口腔内の細菌学的環境の悪化による緊張時口臭の持続が問題になっています。
 また、下向きの姿勢の持続は、胸郭も狭く浅い呼吸になるために呼吸効率の低下を招き、慢性的な疲労時口臭を引き起こします。ゲームをする際の節度ある時間の指導が必要です。
 さらに、ゲームやテレビなどを見ながらの「ながら食べ」の習慣や、孤食習慣は健全な食生活習慣が身につかず、十分な咀嚼などができなくなり、その結果、咀嚼力が低下します。軟らかい食材ばかりを好んで口にしたり、糖質の多いおやつや飲料の「ダラダラ食い」は、口腔内に食物残渣が長時間残り、口腔内pHの低下、さらには唾液の緩衝能力の低下を招くことになり、う蝕リスクを増大させるのみならず、酸性臭の口臭を引き起こしやすくなります。

本田俊一
大阪府・ほんだ歯科・E.Breath Clinic 心斎橋

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