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Q&A
歯科一般 (2019年11月号)
Q 禁煙できた患者が喫煙を再開してしまう
●禁煙指導で悩んでいます。患者が指導を受け入れ、一定期間吸わないことはあるのですが、少し間が空いてしまうと喫煙を再開してしまいます。歯科医院で行う効果的な禁煙指導について教えてください。
──石川県・S歯科
A
喫煙が歯周疾患に影響を及ぼすことは周知の事実であり、さらに近年ではう蝕のリスクにもなっているともいわれています。そのため、歯科医院で禁煙指導を行うことは意義深いものと思われます。しかし、歯科医院での禁煙指導に伴う診療報酬はなく、さらには患者に受け入れてもらえない場合もあります。したがって、多くの歯科医院では、簡単なアドバイスを行うのみで、本格的な禁煙指導は躊躇されていると思われます。
 そんななか、2016年にWHOは口腔保健従事者向けの禁煙プログラムを作成しました。これは、日常の患者1人に対する歯科診療時間のうち3分間ほどを利用して、簡易的に喫煙に介入を行うプログラムとして考案されたもので、当院でも本プログラムを基本に禁煙支援を行っています。詳細は参考文献1)に譲りますが、本プログラムは動機づけ支援と禁煙支援で組み立てられており、非常にシステマティックな禁煙指導が進められるように工夫されています。
 筆者の私見になりますが、本プログラムが最も効果をもたらすのは、歯周治療での禁煙指導時と思われます。中等度の歯周炎患者は、歯周基本治療といえども最短で3ヵ月を要し、その間、指導者と患者は接する時間が比較的多く、ラポールが得られやすいと考えられます。さらに、歯周治療は患者にも実感しやすい臨床的変化(歯肉出血の減少や爽快感など)があります。この臨床的変化が指導者に対する信頼感や禁煙する気持ちを引き出すと思われます。また、当院においては、担当歯科衛生士制をとっているため、担当歯科衛生士が患者の個性や状況を考慮でき、これが効果を得られている理由の一つともいえます。
 さて、ご質問は「一度は指導を受け入れてくれたが、少し間が空いてしまうとまた喫煙を再開してしまう」とのことです。当院でも、そのような経験は少なくありません。そのようなときは、患者に正直に言ってくださったことを感謝し、決してネガティブな発言や強い圧力で指導しないことが重要です。また、指導者も気を落とさず、患者を励ますことが必要です。このような患者は、いわゆる両価的(禁煙を継続したい気持ちと、喫煙したい誘惑で心が揺れている)心情から、喫煙のほうに傾いてしまった状態です。しかし、指導者側に話してくれたということは、もう一度助けてほしい気持ちが少なからずあるものと思われます。この状態を理解したうえで、患者を勇気づけて、再度禁煙指導を行ってみてください。その継続が、やがては禁煙、そしてタバコの煙を嗅ぐのも嫌になるほどの状態(いわゆる卒煙の状態)になるものと考えています。
 最後に、ここまで禁煙指導と書いてきましたが、「指導」といってしまうと厳格で必ず達成しなければならないイメージを描きがちです。私たちは、あくまでも「禁煙支援」をしているという考え方だと、よりじっくりと余裕をもって取り組めるのではないかと考えています。いつかは禁煙され、そして卒煙することを願って、じっくりと対応することが必要ではないでしょうか。

【参考文献】
  1. 1)小川祐司,他:歯科医院における禁煙指導の意義とポイント〜WHOの簡易タバコ介入プログラムを用いて〜.日本歯科評論,78(3):133-143,2018.

南崎信樹
山口県・南崎歯科医院

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