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TopQ&A補綴 > 他院で作ったパーシャルデンチャーで噛めない!(2019年10月号)
Q&A
補綴(2019年10月号)
Q 他院で作ったパーシャルデンチャーで噛めない!
●他院で作ったパーシャルデンチャーで噛めないと訴える患者が来院した場合、その原因の特定をどのようなステップで行えば、正しい診断が行えるでしょうか
── 東京都・N歯科医院
A
1.原因は歯か義歯か?
 噛めない原因が歯であれば、歯自体が原因で痛いか、義歯を支える力か、咬合力の負担過多か、この問題を克服して機能するかを考えます。
 一方、義歯が原因であれば、バランス(受圧・加圧)が保たれているうえで、支持、把持、維持の三原則を押さえることでどうにか噛めるようになります。作製時に予測することが重要です。
 逆にいえば、前述した条件が欠けているために噛めないといえます。総義歯であれば、その多くは旧義歯を用いてある程度の形に仕上げることによって、噛める最終義歯に繋げることが可能です。一方、パーシャルデンチャーは一発勝負です。数値では表すことのできない経験と勘が義歯の良否を左右します。しかしながら、下記に挙げる視点とポイントを押さえることで義歯の動態を想像できます。
①どこに歯が残っているか
②なぜ歯がなくなったか(う蝕か歯周病か)
③顎堤の状態
④義歯がどのように揺さぶられているか
⑤左右上下の歯の関係
⑥左右上下の義歯の関係
⑦左右上下の歯と義歯の関係
⑧顎堤と対顎の歯との頬舌的位置関係
⑨咬合平面
⑩患者の噛み癖
⑪残存歯の歯周組織の状態
2.キートゥースと犬歯の有無
 残存歯のなかで咬合を支持している歯、歯根面積の大きい歯、遊離端を防いでいる歯などがキートゥースになります。とくに欠損側に隣在する歯は、補綴するには何らかの力がかかってくるため、ブリッジでは支台歯として荷重の負担がかかり、デンチャーではレストやクラスプで負荷を受けます。
 次に、何本の犬歯が残存しているかを考えます。たとえば、犬歯が4本存在していれば、比較的容易な咬合再構成ができ、よりリジッドで予後の良好なデンチャーを作ることができます。犬歯の残存は成否を左右する大きなポイントです。
 歯式でシンプルにイメージしてみましょう(図1)。図1の①〜③は、いずれの歯式も14歯欠損ですが、①の症例は長期的に良好な経過を辿ることは想像に難くありません。しかし、②の症例は、咬合支持がないため、治療方針を立てることすら困難と思います。咬合を支持している部分が何箇所あるか、そしてその配置が重要と考えます。
 次に②と③を比べてみると、③の症例では顎堤に向かっている歯は数本ですが、②ではすべての残存歯が顎堤に向かっています。つまり、咬合圧を顎堤で受け止めるしかなく、咬合高径の低下や咬合平面の狂い、顎堤の吸収などが予測され、難症例といわざるを得ません。
 ②と③は残存歯数と咬合支持数は同じですが、難易度に大きな差があります、配置によっては受圧・加圧要件が違う欠損様式になり、一概に数値では語れない経験と勘が要求される部分です。このようなポイントを総合的に考慮し、決して片顎のみで考えずに対顎との関係を頭に入れて義歯の動態と歯への負担を考えてください。

図1 歯式でイメージする
図1 歯式でイメージする

渡邊祐康
熊本県・わたなべ歯科

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※過去に制作したものなので、現在の法令と異なる場合がございます。
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