ポリリン酸を用いたホワイトニングの特徴
●このところ、ポリリン酸を用いた低価格のホワイトニングが流行していると聞きます。ポリリン酸によるホワイトニングの特徴、利点・欠点を教えてください
─長野県・A歯科
昨今、審美歯科治療の代名詞ともいわれる「ホワイトニング」は、歯科だけでなく、美容分野でも欠かせない市場となっています。また、「ホワイトニング」という言葉が明確な定義をもたないため、口腔ケアグッズとして市販されているホワイトニング用歯磨剤や研磨剤、洗口剤でも、歯科治療で行うのと同じ「ホワイトニング」に分類され、幅広く認知されることで、人々の白い輝く歯への憧れは留まるところをしりません。最近では、美容院やエステサロンでもホワイトニングを取り入れているところも徐々に増えてきているようです。
ここで疑問なのが、通常歯科医院で行われるべきはずの「ホワイトニング」を美容院やエステサロンでもできるのか? ということです。もちろん、歯科医院で行われているホワイトニングと同じことを、これらの店舗では行うことはできません。それは、歯科で使用するホワイトニングの薬剤には「過酸化水素」という歯科医院でしか扱うことのできない危険物第6類に分類される劇物が使用されているためです。
歯科における歯を白くするメカニズムは、歯は象牙質表層の色とエナメル小柱間質に溜まる色素によって着色しますが、過酸化水素はエナメル小柱間質を通り、象牙質表層まで達して着色した色素を分解することができるといわれています。つまり、歯の中に入り込んで、色を根本から漂白できる「本当のホワイト二ング」というのは、歯科でしかできないことになります。
それでは、美容業界で行っている「ホワイトニング」とは何なのでしょうか? ここで登場するのが「ポリリン酸」です。ポリリン酸は色素分解酵素の一つで、食品添加物としても、冷凍食品、ハム、ソーセージなどにも使用されることもあり、劇物等の使用制限をされていないために誰でも使えます。このポリリン酸は、とくに有効なキレート作用を有しますが、過酸化水素のように、象牙質の近くまで入り込むことはなく、表層の色素のみ分解するため、一般的にはその効果は小さいといえるでしょう。
したがって、ポリリン酸は、歯科においては表面をクリーニングする程度の効果+αしか期待できませんが、過酸化水素でのホワイトニングよりも大きな利点として、痛みがないため、無痛ホワイトニングとしての一選択肢となることでしょう(表1)。過酸化水素は前述したように、象牙質まで薬剤が浸透すると考えられますが、その証拠として薬剤が象牙細管を刺激するために痛みが生じます。一方のポリリン酸は表層に留まるために、痛みが生じないと考えられています。
また、ポリリン酸と一言にいっても、一般的なポリリン酸ナトリウム(リン酸が3つのみ結合)のほか、最もホワイトニングに有効とされる分割ポリリン酸(リン酸の結合が一定の長さを有するもの)もあり、ポリリン酸なら何でもよいということではないようです。
さて、ポリリン酸をもう少し歯科的観点から臨床的に考えてみますと、筆者はホワイトニングの施術において、従来の過酸化水素、過酸化尿素を使用して行い、メインテナンスとしてポリリン酸ホワイトニングを行うことを推奨しています(ポリリン酸は再着色を抑える効果が高いと報告されているため)。また、痛みがかなり強い患者においては、過酸化水素の濃度を落とし、ポリリン酸と併用したものを使う場合もあります(わが国では認可を受けていないため、個人輸入となります)。
美容業界では、歯科で用いられる過酸化水素を使えないため、ポリリン酸の効果が小さくても「ホワイトニング」というキーワードを武器に、新たな柱と流行を作ろうとしています。そう考えると、「効果が小さいなら流行ることはないよね〜」と思われますが、歯科医院で行うよりも低価格で、手軽で痛みもないということで、私たちが想像しているよりも大きなマーケットに成長しつつあるようです。よって「私たちの顧客を奪われるのでは?」と不安になるかと思われますが、マーケットが大きくなればなるほど相乗効果もあり、いわゆる“プチ”ホワイト二ングでは満足できない方が、歯科医院に殺到するかも(?)しれません。筆者はこの状況をたいへんポジティブに捉えていますので、さらなる発展を期待しています。
表(1) 過酸化水素およびポリリン酸を用いたホワイトニングの比較
ここで疑問なのが、通常歯科医院で行われるべきはずの「ホワイトニング」を美容院やエステサロンでもできるのか? ということです。もちろん、歯科医院で行われているホワイトニングと同じことを、これらの店舗では行うことはできません。それは、歯科で使用するホワイトニングの薬剤には「過酸化水素」という歯科医院でしか扱うことのできない危険物第6類に分類される劇物が使用されているためです。
歯科における歯を白くするメカニズムは、歯は象牙質表層の色とエナメル小柱間質に溜まる色素によって着色しますが、過酸化水素はエナメル小柱間質を通り、象牙質表層まで達して着色した色素を分解することができるといわれています。つまり、歯の中に入り込んで、色を根本から漂白できる「本当のホワイト二ング」というのは、歯科でしかできないことになります。
それでは、美容業界で行っている「ホワイトニング」とは何なのでしょうか? ここで登場するのが「ポリリン酸」です。ポリリン酸は色素分解酵素の一つで、食品添加物としても、冷凍食品、ハム、ソーセージなどにも使用されることもあり、劇物等の使用制限をされていないために誰でも使えます。このポリリン酸は、とくに有効なキレート作用を有しますが、過酸化水素のように、象牙質の近くまで入り込むことはなく、表層の色素のみ分解するため、一般的にはその効果は小さいといえるでしょう。
したがって、ポリリン酸は、歯科においては表面をクリーニングする程度の効果+αしか期待できませんが、過酸化水素でのホワイトニングよりも大きな利点として、痛みがないため、無痛ホワイトニングとしての一選択肢となることでしょう(表1)。過酸化水素は前述したように、象牙質まで薬剤が浸透すると考えられますが、その証拠として薬剤が象牙細管を刺激するために痛みが生じます。一方のポリリン酸は表層に留まるために、痛みが生じないと考えられています。
また、ポリリン酸と一言にいっても、一般的なポリリン酸ナトリウム(リン酸が3つのみ結合)のほか、最もホワイトニングに有効とされる分割ポリリン酸(リン酸の結合が一定の長さを有するもの)もあり、ポリリン酸なら何でもよいということではないようです。
さて、ポリリン酸をもう少し歯科的観点から臨床的に考えてみますと、筆者はホワイトニングの施術において、従来の過酸化水素、過酸化尿素を使用して行い、メインテナンスとしてポリリン酸ホワイトニングを行うことを推奨しています(ポリリン酸は再着色を抑える効果が高いと報告されているため)。また、痛みがかなり強い患者においては、過酸化水素の濃度を落とし、ポリリン酸と併用したものを使う場合もあります(わが国では認可を受けていないため、個人輸入となります)。
美容業界では、歯科で用いられる過酸化水素を使えないため、ポリリン酸の効果が小さくても「ホワイトニング」というキーワードを武器に、新たな柱と流行を作ろうとしています。そう考えると、「効果が小さいなら流行ることはないよね〜」と思われますが、歯科医院で行うよりも低価格で、手軽で痛みもないということで、私たちが想像しているよりも大きなマーケットに成長しつつあるようです。よって「私たちの顧客を奪われるのでは?」と不安になるかと思われますが、マーケットが大きくなればなるほど相乗効果もあり、いわゆる“プチ”ホワイト二ングでは満足できない方が、歯科医院に殺到するかも(?)しれません。筆者はこの状況をたいへんポジティブに捉えていますので、さらなる発展を期待しています。
表(1) 過酸化水素およびポリリン酸を用いたホワイトニングの比較
種類 | 施術場所 | 痛み | 効果 | 再着色 |
---|---|---|---|---|
過酸化水素 | 歯科でしか行えない | 痛みが出る可能性大 | 大 | しやすい |
ポリリン酸 | 美容院やエステサロンでも可能 | ほとんど痛みなし | 小 | しにくい |
北原信也
●東京都・ノブデンタルオフィス