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Q&A
法律(2018年11月号)
Q欠陥が判明した中古物件
●個人の売主から中古物件を購入し、開業しました。しかし、開業後すぐに雨漏りが生じ、診療に支障を来しています。状況から判断すると、購入前から雨漏りは生じていたようです。購入時に説明がなかったので売主に損害賠償を請求したいのですが可能でしょうか。
── 大阪府・T歯科
A
 売主に対する損害賠償請求の根拠としては、瑕疵(かし)担保責任と、債務不履行ないし不法行為責任の2つが考えられます。
 瑕疵担保責任とは、売買の目的物が個性ある特定物であり、目的物に「隠れた瑕疵(欠陥)」があった場合には、売主に過失(落ち度)がなくても、売主は買主に対して一定の賠償責任を負う制度です。中古建物は代替できない個性ある特定物ですので、雨漏りの原因が「隠れた瑕疵」に該当すれば、売主の瑕疵担保責任を追及し得ます。
 「隠れた瑕疵」とは、取引上要求される一般的な注意では発見できない欠陥のことをいいます。ご質問の雨漏りについては、たとえば売買契約締結前から天井に亀裂があることや屋根に損傷があることが外観上あきらかであったとか、天井や床に雨染みがあり過去に雨漏りがあったことが強く疑われたなどの事情がないかぎり、建築や不動産の専門家ではない先生が瑕疵を容易に発見することは困難であったと考えられます。そうすると、今回の雨漏りの原因は「隠れた瑕疵」に該当する可能性がありますので、その場合、売主に対し、雨漏りによって発生した損害の賠償を請求することができます。
 もっとも、瑕疵担保責任は当事者間の合意によって排除することが可能です。建物の築年数等にもよりますが、中古建物の売買契約では売主の瑕疵担保責任が契約上免除されているケース(免責特約)も珍しくありません。そのため、売買契約書の内容をよく確認する必要があります。
 次に、債務不履行ないし不法行為責任についてです。たとえば、売主が雨漏りの事実を知っていたにもかかわらず、これを買主に告げなかったり、売主が一般的な注意を払えば雨漏りが生じていることを容易に知ることができたにもかかわらず、これを怠った場合などには、売主に説明義務違反が認められますので、先生は、債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償請求が可能です。
 なお、売主が瑕疵を知りながら買主に告げなかった場合は、瑕疵担保責任の免責特約があったとしても、その効力は否定されます。したがって、売主が故意に雨漏りの事実を隠していた場合、契約上は免責特約があったとしても、瑕疵担保責任と債務不履行ないし不法行為のどちらに基づいても損害賠償請求が可能です。
 ところで、ご相談のケースでは、売主だけでなく仲介業者に対する責任追及も検討すべきです。もし、仲介業者が雨漏りの事実を知りながら故意に隠していた、または宅建業者として求められる注意義務を果たしていれば雨漏りを知ることができたのにこれを怠った場合、仲介業者の説明・調査義務違反となりますので、仲介業者に対しても債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償請求が可能です。
 最後に、損害賠償請求が可能な期間についてです。瑕疵担保責任の場合は、原則として買主が欠陥を見つけたときから1年以内に請求する必要があります。この期間も当事者間の合意で変更可能ですので、契約書の確認が必要です。債務不履行に基づく損害賠償請求は債務不履行時から10年、不法行為に基づく損害賠償請求は損害および加害者を知ったときから3年です。

井上雅弘
銀座誠和法律事務所

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