院長が出勤しない場合の責任の所在
●私は勤務医ですが、院長が別の歯科医院でも診療を行っており、当院には月1回ほど様子を見に来るだけのため、勤務歴が最も長い私が医院を仕切っている状態です。院長が出勤しないのは法的に問題ないのでしょうか。また、万が一、当院でトラブルが生じた際、責任の所在はどうなるのでしょうか。
── 東京都・T歯科
まず最初のご質問についてですが、「院長」は法律上の名称ではありません。医療法上、「開設者」や「管理者」に関する規定はありますが、「院長」に関する規定はなく、その権限・責任も法律上決まっていません。もっとも、社会通念上、院長は管理者を指すのが一般的です。そのため、先生の医院の院長も管理者である前提で回答します。
管理者は、当該医療機関における安全を確保するとともに、当該医療機関を医療法に適合するように適正に管理する立場にあります。そのため、従業者監督義務等のさまざまな義務を負っています。これらの義務の履行のため、管理者が原則として診療時間中に当該病院または診療所に常勤すべきことは当然とされています(「管理者の常勤しない診療所の開設について」昭和29年10月19日付医収第403号厚生省医務局長通知)。
そこで、月1回ほどの様子見が常勤といえるのか、「常勤」の意味が問題となります。この点については、厚生労働省医政局作成の「医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱」の別紙「常勤医師等の取扱いについて」に記載があります。これによると、「常勤医師とは、原則として病院で定めた医師の勤務時間の全てを勤務する者をいう」とされています。
ご質問のケースでは、月1回の様子見では医院で定めた歯科医師の勤務時間のすべてを勤務しているとは到底いえないため、院長は「常勤」しているとはいえません。そのため、院長の勤務態様は管理者として不適切であり、法的に問題があることになります。
2つ目のご質問についてですが、一般論として、院内のトラブルについては医院の責任者である開設者が責任を負うのが原則です。したがって、院長が開設者でもある場合、原則として院長が責任を負います。
なお、開設者が“管理者となることができる者”であるときは、都道府県知事の許可を受けた場合を除き、自らが管理者とならなければなりません(医療法12条1項)。そのため、開設者が“管理者となることができない者”、つまり臨床研修等修了医師・歯科医師でない場合、都道府県知事の許可を受けた場合には、開設者と管理者が同一人物ではないことになります。この場合でも、管理者は開設者のため管理を代行しているだけですので、医院に対する最終的な責任は開設者が負うことになります。
ただし、たとえば勤務医である先生が治療中に過誤を生じさせた場合など、直接の加害者となった場合は、開設者も使用者として患者に対する損害賠償責任を負担しますが、勤務医も開設者と連帯して患者に対する損害賠償責任を負います。
管理者は、当該医療機関における安全を確保するとともに、当該医療機関を医療法に適合するように適正に管理する立場にあります。そのため、従業者監督義務等のさまざまな義務を負っています。これらの義務の履行のため、管理者が原則として診療時間中に当該病院または診療所に常勤すべきことは当然とされています(「管理者の常勤しない診療所の開設について」昭和29年10月19日付医収第403号厚生省医務局長通知)。
そこで、月1回ほどの様子見が常勤といえるのか、「常勤」の意味が問題となります。この点については、厚生労働省医政局作成の「医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱」の別紙「常勤医師等の取扱いについて」に記載があります。これによると、「常勤医師とは、原則として病院で定めた医師の勤務時間の全てを勤務する者をいう」とされています。
ご質問のケースでは、月1回の様子見では医院で定めた歯科医師の勤務時間のすべてを勤務しているとは到底いえないため、院長は「常勤」しているとはいえません。そのため、院長の勤務態様は管理者として不適切であり、法的に問題があることになります。
2つ目のご質問についてですが、一般論として、院内のトラブルについては医院の責任者である開設者が責任を負うのが原則です。したがって、院長が開設者でもある場合、原則として院長が責任を負います。
なお、開設者が“管理者となることができる者”であるときは、都道府県知事の許可を受けた場合を除き、自らが管理者とならなければなりません(医療法12条1項)。そのため、開設者が“管理者となることができない者”、つまり臨床研修等修了医師・歯科医師でない場合、都道府県知事の許可を受けた場合には、開設者と管理者が同一人物ではないことになります。この場合でも、管理者は開設者のため管理を代行しているだけですので、医院に対する最終的な責任は開設者が負うことになります。
ただし、たとえば勤務医である先生が治療中に過誤を生じさせた場合など、直接の加害者となった場合は、開設者も使用者として患者に対する損害賠償責任を負担しますが、勤務医も開設者と連帯して患者に対する損害賠償責任を負います。
井上雅弘
●銀座誠和法律事務所