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Q&A
歯科一般 (2017年7月号)
Q 睡眠呼吸障害とは?
●睡眠呼吸障害という言葉を耳にしました。これはどのような疾患で、歯科からのアプローチとして、どのようなことが挙げられるでしょうか。
──岩手県・O歯科医院
A
 睡眠中に呼吸障害を起こす疾患を「睡眠呼吸障害(Sleep Disordered Breathing : SDB)」と呼びます。まず、睡眠呼吸障害(SDB)は、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)とは異なった概念であり、両者を意識して使い分ける必要があります。無呼吸とは10秒以上の呼吸停止のことをいいます。一方で呼吸が30%以上低下し、動脈血中酸素飽和度(SpO2)に4%以上の低下を伴うものを低呼吸といいます。
 SASと診断するにあたっては、睡眠1時間あたりの無呼吸・低呼吸の合計回数を無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index:AHI)とし、これを用います。SDBに日中傾眠、中途覚醒、倦怠感などのSAS関連症状を伴い、AHIが5以上のときにSASと診断されます。

1.SASの分類
  SASには、上気道が閉塞する閉塞性睡眠時無呼吸(Obstructive Sleep Apnea:OSA)と、脳の呼吸中枢からの呼吸指令が停止してしまう中枢性睡眠時無呼吸(Central Sleep Apnea:CSA)、閉塞性と中枢性が連続して起こる混合性睡眠時無呼吸(Mixed Sleep Apnea:MSA)、慢性心不全などのときに起きるチェーン・ストークス呼吸などがあります。他にも、無呼吸・低呼吸はほとんど生じないが、大きないびきのために呼吸抵抗が大きくなり、呼吸努力による覚醒反応がたびたび生じるために日中の眠気が起きる上気道抵抗症候群(Upper Airway Resistance Syndrome:UARS)があります。

2.閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)
 SDBのなかで最も多いのはOSAですので、OSAについて説明します。疫学調査では、30〜60歳、AHIが5以上の者のSDBの有病率は男性24%、女性9%で、「日中傾眠を伴う」という条件を入れると、OSAと診断され、男性の4%、女性の2%が該当します1)。
 女性が少ない理由としては、女性ホルモンが生理学的に上気道の閉塞を防ぐ働きを有することと、男性より解剖学的に上気道が閉塞しにくい構造をしていることが考えられています。したがって、女性において閉経はOSAのリスクを上げ、男女ほぼ同水準になると報告されています2〜4)。
3.OSAの診断基準
 OSAは肥満が原因だといわれていますが、肥満でなくても発症するのが日本人の特徴です。最新の国際分類ICSD-3では、OSAは成人と小児で分類されていますが、本稿では成人に関しての診断基準を解説します。
図1のリスク因子に1つでも該当し、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)あるいはセンター外睡眠検査(OCST)で、5回以上の閉塞性呼吸イベントが(PSGでは睡眠1時間あたり、OCSTでは記録時間中1時間あたり)がある場合、あるいは、PSGかOCSTで15回以上の閉塞性呼吸イベントがある場合、OSAと診断されます。
ハリソン内科学最新改訂版では、『OSAHS(閉塞性睡眠時無呼吸低呼吸症候群)は最近50年間であきらかになってきた最も重要な病態の1つである。世界中で死亡する重要な原因の1つでもある』と記載されています。OSAが高血圧症をはじめ、循環器疾患、糖尿病など、全身への影響があきらかになっており、さまざまな疫学調査で、寿命を短くすることがわかっています。

3.OSAの治療
 治療法は持続的陽圧呼吸治療(Continuous Positive Airway Pressure:CPAP)と口腔内装置(Oral Appliance : OA)が主流です。CPAP治療を受け入れることのできない患者さんも多く存在するため、OA治療の重要性は増しています。最近では、長期的に見るとCPAP治療とOA治療に差がないという調査結果も増えてきています5,6)。患者は上気道が狭窄しているため、歯科治療中に息苦しさを訴えることがあり、注意が必要です。呼吸障害の疑いがある場合は、呼吸器内科、循環器内科、耳鼻咽喉科などに紹介して連携治療を進めていくことが重要です。歯科においては、医療連携が最も進んだ分野で、医科から歯科に対する期待は大きいものがあります。
 
眠気、休まらない睡眠、疲労感、不眠の訴え、呼吸停止、喘ぎ、窒息感での覚醒、ベッドパートナーによる習慣性のいびき、呼吸中断の報告、高血圧、気分障害、認知障害、冠動脈疾患、うっ血性心不全、心房細動、II型糖尿病
▲図(1) OSAのリスク因子
【参考文献】
1) Young T, Palta M, Demsey J, et al. : The occurrence of sleep-disordered breathing among middle-aged adults. N Engl J Med 1993; 328: 1230-5.
2) Philips BA : Obstructive sleep apnea in the elderly. In Principles and practice of sleep medicine, 5th ed, Elsevier Saunders,Missouri,2011 ;pp1536-1543.
3) Young T et al : Menopausal status and sleep-disordered breathing in the Wisconsin Sleep Cohort Study. Am J Crit Care Med 2003; 167: 1181-1185.
4) Bixler EO et al : Prevalence of sleep-disordered breathing in women : effects of gender. Am J Respir Crit Care Med 2001 ;163 : 608-613.
5) Anandam A.Patil M.Akinnusi M.Jaoude P : El-Solh AA.Respirology. 2013 Nov;18(8): 1184-90. doi: 10.1111/resp.12140.
6) Daniel J Bratton, Thomas Gaisl, Annette M Wons, Malcolm Kohler .JAMA. 2015 Dec 1;314(21); 2280-93. doi: 10.1001/jama.2015.16303.

古畑 升東京都・古畑歯科医院
いびき睡眠呼吸障害研究所
日本歯科大学附属病院 内科臨床教授
いびき・睡眠時無呼吸診療センター

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