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●患者から、ビスホスホネート系薬剤の服用を申告されていたにもかかわらず、抜歯して腐骨を起こした場合、医院側の責任はどうなるのでしょうか。また、服用を申告されていなかった場合についても教えてください。
── 大阪府・F歯科医院
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ご存じのとおり、ビスホスホネート(以下、BP)系薬剤は、破骨細胞の活動を阻害し、骨の吸収を防ぐ薬剤です。骨粗鬆症領域、がん領域を始め、骨ベーチェット病や小児骨形成不全などにも有用性が報告されており、骨代謝異常疾患治療には不可欠といわれています。
他方で、2003年に公表された文献報告以降、BP系薬剤と顎骨壊死の関連性が報告され、注目されています(社団法人日本口腔外科学会監修「ビスホスホネート系薬剤と顎骨壊死」)。このような状況に照らせば、現在において、BP系薬剤関連顎骨壊死(BRONJ)に関する知見は、歯科医師にとって必須といっても過言ではありません。換言すれば、仮にBP系薬剤と顎骨壊死の関連性について知らなくとも、法的には歯科医師の研鑽義務違反と評価され、責任を追及される可能性が高いといえます。
歯科領域における研鑽義務については、たとえば、ロキソニンによる喘息発作で患者が死亡した事例の判例があります(福岡地裁平成6年12月26日判決)。これは、ロキソニンがアスピリン喘息を惹起することおよびロキソニンをアスピリン喘息、またはその既往歴のある患者に投与してはならないことをまったく知らなかった歯科医師が、抜歯後にロキソニンを投与し、結果、患者が帰宅後に喘息発作を起こして死亡した事案です。
裁判所は、添付文書の記載や医学文献の存在などから、当該歯科医師には、ロキソニンを投与するにあたり、その禁忌症であるアスピリン喘息に関する知識の修得に努めなければならない研鑽義務が課せられていたにもかかわらず、これを怠った過失があるとし、損害賠償を命じました。以上より、ご質問の前段については、医院側の責任はまず免れられないと考えられます。
ご質問の後段についてですが、そのようなBRONJのケースに関し、責任の有無を直接判断した判例は見当たりません。しかし、私見になりますが、仮に患者から骨代謝異常疾患の申告があった場合、単に患者からBP系薬剤の服用の申告がなかったからとはいえ、腐骨が生じた場合に責任を負わないとは必ずしもいえないと思います。前述のとおり、BP系薬剤は骨代謝異常疾患として広く用いられていること、BP系薬剤と顎骨壊死の関連性について指摘する文献は多数存在すること、その副作用は重篤であることなどに照らせば、患者が骨粗鬆症治療などの骨代謝異常疾患を申告していた場合、歯科医師にはBP系薬剤の使用を疑い、より詳しく問診する義務が認められる可能性があります。
とくに、がん患者などでBP系薬剤を注射されている場合は、患者にBP系薬剤を使用している自覚がないこともあるといわれています。患者の申告した薬剤や疾病・疾患のみならず、疾病・疾患から推測される薬剤や、薬剤から推測される疾病・疾患にも注意を払う必要があります。
他方で、2003年に公表された文献報告以降、BP系薬剤と顎骨壊死の関連性が報告され、注目されています(社団法人日本口腔外科学会監修「ビスホスホネート系薬剤と顎骨壊死」)。このような状況に照らせば、現在において、BP系薬剤関連顎骨壊死(BRONJ)に関する知見は、歯科医師にとって必須といっても過言ではありません。換言すれば、仮にBP系薬剤と顎骨壊死の関連性について知らなくとも、法的には歯科医師の研鑽義務違反と評価され、責任を追及される可能性が高いといえます。
歯科領域における研鑽義務については、たとえば、ロキソニンによる喘息発作で患者が死亡した事例の判例があります(福岡地裁平成6年12月26日判決)。これは、ロキソニンがアスピリン喘息を惹起することおよびロキソニンをアスピリン喘息、またはその既往歴のある患者に投与してはならないことをまったく知らなかった歯科医師が、抜歯後にロキソニンを投与し、結果、患者が帰宅後に喘息発作を起こして死亡した事案です。
裁判所は、添付文書の記載や医学文献の存在などから、当該歯科医師には、ロキソニンを投与するにあたり、その禁忌症であるアスピリン喘息に関する知識の修得に努めなければならない研鑽義務が課せられていたにもかかわらず、これを怠った過失があるとし、損害賠償を命じました。以上より、ご質問の前段については、医院側の責任はまず免れられないと考えられます。
ご質問の後段についてですが、そのようなBRONJのケースに関し、責任の有無を直接判断した判例は見当たりません。しかし、私見になりますが、仮に患者から骨代謝異常疾患の申告があった場合、単に患者からBP系薬剤の服用の申告がなかったからとはいえ、腐骨が生じた場合に責任を負わないとは必ずしもいえないと思います。前述のとおり、BP系薬剤は骨代謝異常疾患として広く用いられていること、BP系薬剤と顎骨壊死の関連性について指摘する文献は多数存在すること、その副作用は重篤であることなどに照らせば、患者が骨粗鬆症治療などの骨代謝異常疾患を申告していた場合、歯科医師にはBP系薬剤の使用を疑い、より詳しく問診する義務が認められる可能性があります。
とくに、がん患者などでBP系薬剤を注射されている場合は、患者にBP系薬剤を使用している自覚がないこともあるといわれています。患者の申告した薬剤や疾病・疾患のみならず、疾病・疾患から推測される薬剤や、薬剤から推測される疾病・疾患にも注意を払う必要があります。
井上雅弘●銀座誠和法律事務所
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