医療事故調査制度の仕組み
●医療事故調査制度が始まったと聞きました。歯科も関係あるのでしょうか。どのような制度なのか教えてください。
── 埼玉県・Sデンタルオフィス
平成27年10月1日から医療事故調査制度が施行されました。この制度は、医療事故が発生した医療機関において院内調査を行い、その調査報告を民間の第三者機関(医療事故調査・支援センター)が収集・分析するものであり、医療の安全を確保するため、医療事故の再発防止を目的とした制度で、歯科も対象とされています。
本制度の対象となる医療事故は、医療法上、「医療事故(当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であつて、当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかつたものとして厚生労働省令で定めるもの)」とされています。すなわち、本制度によって、医療機関には、予期せぬ死亡事故に関する院内調査などが義務づけられることになりました。もっとも、歯科治療が患者の生死にかかわる事例は稀との声もあり、歯科医師の間で制度の認知が進んでいないとも言われています。
しかし、歯科医療に関連して起きた死亡事案は、2002年からの約10年間で少なくとも33件あったとする指摘や、本制度の対象となる事案は年に10件程度起こるという指摘もあるとのことです(共同通信社・平成27年10月19日配信記事)。
判例上も、古くから、劇薬塩酸コカイン誤投与死亡事件(福岡高裁昭和40年2月12日判決)、抜歯後麻酔管理過誤死亡事件(最高裁昭和48年9月21日判決)、下顎骨骨折治療全身麻酔死亡事件(東京地裁平成元年4月27日判決)、抜去歯落下気道閉塞死亡事件(浦和地裁熊谷支部平成2年9月25日判決)、ロキソニンによるぜんそく発作死亡事件(福岡地裁平成6年12月26日判決)、局所麻酔によるアナフィラキシーショック死亡事件(福岡地裁平成17年7月14日判決)等など、歯科治療時における死亡事例は複数あります。また、最近でも、インプラント治療によるオトガイ下動脈損傷死亡事件(東京地裁平成25年3月4日判決)、脱脂綿落下気道閉塞死亡事件(さいたま地裁平成26年10月10日判決)などがあります。
このように、歯科治療においても患者の生死に直面するケースはあり得るため、本制度に対する理解を深めておく必要があります。死亡事故が起きた後の具体的な流れですが、厚生労働省「医療事故調査制度に関するQ&A」では、「医療機関は、医療事故が発生した場合、まずは遺族に説明を行い、医療事故調査・支援センターに報告します。その後、速やかに院内事故調査を行います。医療事故調査を行う際には、医療機関は医療事故調査等支援団体に対し、医療事故調査を行うために必要な支援を求めるものとするとされており、原則として外部の医療の専門家の支援を受けながら調査を行います。院内事故調査の終了後、調査結果を遺族に説明し、医療事故調査・支援センターに報告します」とされています。
また、院内事故調査の内容としては、(1)診療録その他の診療に関する記録の確認、(2)当該医療従事者のヒアリング、(3)その他の関係者(場合によっては遺族も含む)からのヒアリング、(4)医薬品、医療機器、設備等の確認、(5)解剖又は死亡時画像診断(Ai) については解剖又は死亡時画像診断(Ai)の実施前にどの程度死亡の原因を医学的に判断できているか、遺族の同意の有無、解剖又は死亡時画像診断(Ai) の実施により得られると見込まれる情報の重要性などを考慮して実施の有無を判断する、(6)血液、尿等の検体の分析・保存の必要性を考慮、とされており、これらについて必要な範囲で情報の収集・整理を行うこととなります。
本制度の対象となる医療事故は、医療法上、「医療事故(当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であつて、当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかつたものとして厚生労働省令で定めるもの)」とされています。すなわち、本制度によって、医療機関には、予期せぬ死亡事故に関する院内調査などが義務づけられることになりました。もっとも、歯科治療が患者の生死にかかわる事例は稀との声もあり、歯科医師の間で制度の認知が進んでいないとも言われています。
しかし、歯科医療に関連して起きた死亡事案は、2002年からの約10年間で少なくとも33件あったとする指摘や、本制度の対象となる事案は年に10件程度起こるという指摘もあるとのことです(共同通信社・平成27年10月19日配信記事)。
判例上も、古くから、劇薬塩酸コカイン誤投与死亡事件(福岡高裁昭和40年2月12日判決)、抜歯後麻酔管理過誤死亡事件(最高裁昭和48年9月21日判決)、下顎骨骨折治療全身麻酔死亡事件(東京地裁平成元年4月27日判決)、抜去歯落下気道閉塞死亡事件(浦和地裁熊谷支部平成2年9月25日判決)、ロキソニンによるぜんそく発作死亡事件(福岡地裁平成6年12月26日判決)、局所麻酔によるアナフィラキシーショック死亡事件(福岡地裁平成17年7月14日判決)等など、歯科治療時における死亡事例は複数あります。また、最近でも、インプラント治療によるオトガイ下動脈損傷死亡事件(東京地裁平成25年3月4日判決)、脱脂綿落下気道閉塞死亡事件(さいたま地裁平成26年10月10日判決)などがあります。
このように、歯科治療においても患者の生死に直面するケースはあり得るため、本制度に対する理解を深めておく必要があります。死亡事故が起きた後の具体的な流れですが、厚生労働省「医療事故調査制度に関するQ&A」では、「医療機関は、医療事故が発生した場合、まずは遺族に説明を行い、医療事故調査・支援センターに報告します。その後、速やかに院内事故調査を行います。医療事故調査を行う際には、医療機関は医療事故調査等支援団体に対し、医療事故調査を行うために必要な支援を求めるものとするとされており、原則として外部の医療の専門家の支援を受けながら調査を行います。院内事故調査の終了後、調査結果を遺族に説明し、医療事故調査・支援センターに報告します」とされています。
また、院内事故調査の内容としては、(1)診療録その他の診療に関する記録の確認、(2)当該医療従事者のヒアリング、(3)その他の関係者(場合によっては遺族も含む)からのヒアリング、(4)医薬品、医療機器、設備等の確認、(5)解剖又は死亡時画像診断(Ai) については解剖又は死亡時画像診断(Ai)の実施前にどの程度死亡の原因を医学的に判断できているか、遺族の同意の有無、解剖又は死亡時画像診断(Ai) の実施により得られると見込まれる情報の重要性などを考慮して実施の有無を判断する、(6)血液、尿等の検体の分析・保存の必要性を考慮、とされており、これらについて必要な範囲で情報の収集・整理を行うこととなります。
井上雅弘●銀座誠和法律事務所