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TopQ&A法律 > インプラントやセラミッククラウンなどの保証期間(2015年1月号)
Q&A
 
法律(2015年1月号)
Q インプラントやセラミッククラウンなどの保証期間
●インプラントやセラミッククラウンなどの自費治療について保証期間を設ける医院が多いですが、法的に、保証期間は設けなければならないのでしょうか。設けなかった場合、一切責任を負わないでよいのでしょうか。設けた場合は、どこまで責任を負うのでしょうか。
── 大阪府・T歯科
A
  法的に、保証期間を設けることは義務ではありません。昨今、保証期間を設ける例が多いのは、単純にサービスの差別化を図るためと思われます。
  保証期間を設けなかった場合、予見できなかった患者の咬合悪癖や不注意などによってインプラントやクラウンに問題が生じたとしても、治療に問題がなかったのであれば、歯科医師は責任を負いません。修理した場合には、診療費を請求して差し支えありません。
  もっとも、たとえばインプラント体の埋入角度が不適切であったり、クラウンの形状が不正であったなど、治療に問題があり、それが原因で修理・再製などが必要になった場合には、保証期間の有無にかかわらず、債務不履行ないし不法行為に基づき、歯科医師は責任を負います。責任を負う期間は、債務不履行は治療時から10年、不法行為は患者が損害を知ってから(治療の問題や不具合を認識してから)3年、患者が損害を知らなくとも治療時から20年です。
  患者が歯科医師の責任を追及する場合、治療から3年以内であれば債務不履行責任と不法行為に基づく損害賠償請求を選択的に、3年以上であれば債務不履行に基づいて損害賠償請求をしてきます。債務不履行責任と不法行為責任は、法的にいえば厳密には異なるのですが、歯科医師の先生方の対応に影響を与える差異ではありません。そのため、先生方の認識としては、少なくとも10年間は責任追及される可能性があるとお考えいただくのがよいかと思います(理論的には最長20年間ですが、自分の口腔内の不具合に20年間も気づかないというのは、通常考えられません)。
  保証期間を設けた場合の保証内容については、歯科医師が自由に決定できます。たとえば、保証期間を治療時から1ヵ月間、1年間、10年間、果ては一生と設定することも自由です。回数についても、修理は何度でも無料とか、3回まで無料など、どのように決めても構いません。
  ところで、保証の有無の話とはややずれますが、前述のとおり、歯科診療については少なくとも10年間は責任追及されるリスクがあります。しかし、ご承知のとおり、カルテの法定保存期間は5年です。先生方のなかには、5年経過後、直ちにカルテを廃棄している方もいらっしゃいますが、万一、5年以上10年未満の時点で責任追及された場合、治療が適切であったことを立証する資料がないことになります。現に、私も、診療終了後7〜8年目ほどで訴訟を提起され、医療記録が一切なかったケースを複数件扱ったことがありますが、歯科医師の先生の記憶に頼るほかなく、反論に苦慮しました。
  そのため、とくに開業医の先生にとっては保管スペースの問題もあり、実際として難しい場合もあると思いますが、医療記録は最後の通院日から少なくとも10年間は保存されることをお勧めします。

金田英一銀座誠和法律事務所

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