子どもの歯ぎしりへの対応
●5歳児の保護者から、就寝時や食事中に、子どもが歯ぎしりをするという相談を受けました。どのように対応すればよいでしょうか。
──茨城県・H歯科医院
歯ぎしりは、睡眠中に無意識に行っている場合と、覚醒中、すなわち食事中などに発現するものに大別されます。そこで、それぞれの歯ぎしりに対する対応策を記載します。
1.睡眠中に発現する歯ぎしりへの対応
睡眠中に起こる歯ぎしりは、睡眠関連歯ぎしり(Sleep related bruxism)といわれ、睡眠中に上下の歯をグラインドしたり、クレンチングをするのが特徴であり、通常は脳波的覚醒反応を伴うといわれています。そしてSuwaらは、小学校低学年において睡眠関連歯ぎしりが高頻度に発現する危険因子として、「テレビ・ゲーム・インターネットが1日3時間以上」、「学童保育利用」、「夜食の習慣化」が挙げられると報告しています。また、歯ぎしりをしやすい小児は、「怒りっぽい」、「不安感が強い」、「悲しみを感じやすい」、「いらいらしやすい」、「短気である」といった気質であり、加えて「自己規制をする」、「責任感が強い」傾向にあることを挙げています。
したがって、まず行うべき事柄は、子どもを取り巻く環境を分析し、“過度の刺激的活動は避け、ゆったり過ごさせる”、“睡眠時間を十分にとる”といった生活改善でしょう。そして、夕食後のひとときは“子どもの重荷”をいち早く発見してストレスを軽減させる絶好の機会です。つまり、夕食後は是非とも親子の団欒の時間にするよう指導していただきたいと思います。
なお、就寝中の歯ぎしりは、脳波的覚醒反応を伴うということですが、就寝直前に夜食をとりますと、胃酸が逆流して不快感を生じ、また、寄生虫に起因する肛門周囲の掻痒感によっても脳波的覚醒状態になる傾向にあるとされています。つまり、意外な原因が、歯ぎしりを発生させる誘因となることがありますので、ご注意ください。
2.咬合の不均衡による歯ぎしりへの対応
筆者が携わっている小児の歯科健康診査の場で、母親から「食事中にキリキリという歯ぎしりの音が聞こえる」という訴えを聞くことが多々あります。そのような小児を診査すると、多くの小児において、切歯部の逆被蓋や臼歯部の交叉咬合を呈しています。そして、乳切歯や乳犬歯に、生理的範囲を超えた咬耗が認められます。つまり、乳切歯切端、乳犬歯尖頭あるいは乳臼歯咬頭頂の早期接触と干渉によって下顎が滑走し、前方位あるいは側方位に噛みこむ際に歯ぎしり音が発生し、なおかつ干渉部が次第に咬耗するということです。
実際、筆者らの研究結果をみても、乳犬歯がClass3の咬合関係の小児は乳切歯切端に、乳歯部交叉咬合の小児は乳臼歯に異常な咬耗が認められています。ただし、このような不正咬合に対する介入方法や介入時期については、専門的な知識と技術が必要です。
加えて、歯ぎしりの原因として、歯列の成長を無視することはできません。6〜8歳ごろの小児に咀嚼運動をさせると、上顎乳犬歯の近心切縁と下顎乳犬歯の遠心切縁が滑走する際に、歯ぎしり音が発生することがあります。
Moorreesらや、東京歯科大学小児歯科学講座が長年行ってきた研究からみると、乳犬歯間幅径は第1大臼歯、中切歯そして側切歯が萌出する際に顕著に拡大しますが、その拡大時期や量は上下顎で異なります。つまり、このような時期において、小児の咬合関係は日々変化しているといっても過言ではありません。早期接触や干渉傾向になる場合も考えられます。しかしこのような変化は、成長・発達による一時的なものと考えられますので、歯ぎしりへの対応として、短絡的に歯牙を削合することは避けなければなりません。
したがって、歯ぎしりが不正咬合や歯列の成長に伴うものと考えられた場合は、小児歯科、あるいは矯正歯科の専門医への紹介が望まれます。また、異常な咬耗を伴う場合、スプリントを装着させることもありますが、小児に装着させる場合は歯列の正常な成長・発達を阻害させないといった配慮が必要であるということもご承知おきください。
1.睡眠中に発現する歯ぎしりへの対応
睡眠中に起こる歯ぎしりは、睡眠関連歯ぎしり(Sleep related bruxism)といわれ、睡眠中に上下の歯をグラインドしたり、クレンチングをするのが特徴であり、通常は脳波的覚醒反応を伴うといわれています。そしてSuwaらは、小学校低学年において睡眠関連歯ぎしりが高頻度に発現する危険因子として、「テレビ・ゲーム・インターネットが1日3時間以上」、「学童保育利用」、「夜食の習慣化」が挙げられると報告しています。また、歯ぎしりをしやすい小児は、「怒りっぽい」、「不安感が強い」、「悲しみを感じやすい」、「いらいらしやすい」、「短気である」といった気質であり、加えて「自己規制をする」、「責任感が強い」傾向にあることを挙げています。
したがって、まず行うべき事柄は、子どもを取り巻く環境を分析し、“過度の刺激的活動は避け、ゆったり過ごさせる”、“睡眠時間を十分にとる”といった生活改善でしょう。そして、夕食後のひとときは“子どもの重荷”をいち早く発見してストレスを軽減させる絶好の機会です。つまり、夕食後は是非とも親子の団欒の時間にするよう指導していただきたいと思います。
なお、就寝中の歯ぎしりは、脳波的覚醒反応を伴うということですが、就寝直前に夜食をとりますと、胃酸が逆流して不快感を生じ、また、寄生虫に起因する肛門周囲の掻痒感によっても脳波的覚醒状態になる傾向にあるとされています。つまり、意外な原因が、歯ぎしりを発生させる誘因となることがありますので、ご注意ください。
2.咬合の不均衡による歯ぎしりへの対応
筆者が携わっている小児の歯科健康診査の場で、母親から「食事中にキリキリという歯ぎしりの音が聞こえる」という訴えを聞くことが多々あります。そのような小児を診査すると、多くの小児において、切歯部の逆被蓋や臼歯部の交叉咬合を呈しています。そして、乳切歯や乳犬歯に、生理的範囲を超えた咬耗が認められます。つまり、乳切歯切端、乳犬歯尖頭あるいは乳臼歯咬頭頂の早期接触と干渉によって下顎が滑走し、前方位あるいは側方位に噛みこむ際に歯ぎしり音が発生し、なおかつ干渉部が次第に咬耗するということです。
実際、筆者らの研究結果をみても、乳犬歯がClass3の咬合関係の小児は乳切歯切端に、乳歯部交叉咬合の小児は乳臼歯に異常な咬耗が認められています。ただし、このような不正咬合に対する介入方法や介入時期については、専門的な知識と技術が必要です。
加えて、歯ぎしりの原因として、歯列の成長を無視することはできません。6〜8歳ごろの小児に咀嚼運動をさせると、上顎乳犬歯の近心切縁と下顎乳犬歯の遠心切縁が滑走する際に、歯ぎしり音が発生することがあります。
Moorreesらや、東京歯科大学小児歯科学講座が長年行ってきた研究からみると、乳犬歯間幅径は第1大臼歯、中切歯そして側切歯が萌出する際に顕著に拡大しますが、その拡大時期や量は上下顎で異なります。つまり、このような時期において、小児の咬合関係は日々変化しているといっても過言ではありません。早期接触や干渉傾向になる場合も考えられます。しかしこのような変化は、成長・発達による一時的なものと考えられますので、歯ぎしりへの対応として、短絡的に歯牙を削合することは避けなければなりません。
したがって、歯ぎしりが不正咬合や歯列の成長に伴うものと考えられた場合は、小児歯科、あるいは矯正歯科の専門医への紹介が望まれます。また、異常な咬耗を伴う場合、スプリントを装着させることもありますが、小児に装着させる場合は歯列の正常な成長・発達を阻害させないといった配慮が必要であるということもご承知おきください。
米津卓郎●東京歯科大学 小児歯科学講座