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TopQ&A法律 > マイカー通勤中の交通事故(2013年12月号)
Q&A
法律(2013年12月号)
Q マイカー通勤中の交通事故
●当院では、車での通勤を禁止しているのですが、マイカー通勤をしているスタッフがいます。再三注意したのですが、一向に止めません。もしこのスタッフが通勤中に交通事故を起こした場合、当院に何か責任は生じるのでしょうか。また、労災は認められるのでしょうか。
──富山県・E歯科
A
  スタッフによるマイカー通勤中の交通事故につき、雇用主たる先生、または法人が第三者に対して責任を負う場合として考えられるのは、使用者責任と運行供用者責任があります。使用者責任とは、民法715条に規定されており、使用者(雇用主)は、被用者がその事業の執行について第三者に損害を加えた場合に、その損害を賠償しなければならないとするものです。
  マイカー通勤中の交通事故に関する過去の判例をみると、通勤は使用者が指揮関係を有し、被用者を支配をしている業務とは異なるため、「その事業の執行について」とはいえず、使用者責任を否定するものが比較的多いようです。もっとも、最近ではマイカー通勤を前提に通勤手当を支給していたなど、被用者の積極的なマイカー利用について使用者の容認があったと認められた事案で、通勤は業務そのものではないが、業務に密接に関連するものであり、業務の一部を構成するものとして、むしろ原則として使用者責任や運行供用者責任が認められるべきであるとした裁判例もありますので、注意が必要です。
  ご質問のケースでは、先生がマイカー利用を容認していたとみられる事情はないようですので、使用者責任を問われる心配はないと思われます。
  次に、運行供用者責任とは、自賠法(自動車損害賠償保障法)3条に規定されており、自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命または身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償しなければならないとするものです。使用者責任とは異なり、責任を負う範囲は人損に限られます。
  この「自己のために自動車を運行の用に供する者」とは、自動車に関して運行利益と運行支配を有する者といわれています。過去に運行供用者責任が認められた事例としては、父親の所有する車を子どもが運転して事故を起こした場合の父親、レンタカーを運転中に事故を起こした場合のレンタカー会社等があります。
  ご質問のケースでは、先生が当該スタッフのマイカーの鍵を管理していたとか、そのマイカーを業務利用させていたなどといった事情がない限り、先生に運行供用者責任が認められる可能性は低いと思われます。ただし、昨今は、判例上、運行利益・運行支配の概念が拡張傾向にあるといわれており、運行利益・運行支配が希薄とも思えるケースでも運行供用者責任を問われることがあるので、注意が必要です。
  最後に労災についてですが、使用者責任及び運行供用者責任とは異なり、認められる可能性が高いと思われます。労災制度は、スタッフが仕事中に被った不慮の身体的被害について公的に補償を実施する制度ですが、ここでいう「仕事中」には通勤も含まれます。そして、この「通勤」とは、労働者が就業に関し、住居と就業場所との間を合理的な経路及び方法で往復する行動をいうとされていますので、たとえ雇用主が禁止していても、客観的に見て合理的な方法でさえあれば「通勤」に該当すると解されています。
  もっとも、通勤中に、日用品購入のため短時間スーパー等に立ち寄る程度であればともかく、プライベートな目的で住居と就業場所との間を大幅に外れるルートを走行中に事故を起こした場合等は「通勤」と認められず、補償されない可能性があります。

金田英一銀座誠和法律事務所

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