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Q&A
法律(2013年1月号)
Q 医事紛争に備えた文書作成
●外科やインプラント治療において、歯科医師は患者と文書を取り交わすべきでしょうか。もし取り交わすべきであるなら、例えば患者に対する保証内容、説明、患者による同意等、盛り込むべき具体的な内容をお教えください。
──滋賀県・K歯科
A
  外科やインプラント治療等は、通常の歯科治療と比較して侵襲の程度やリスクが高く、費用も高額です。そのため、事前に患者と文書を取り交わしたり、患者から文書を差し出してもらうことは、非常に有益ですし、必須といっても過言ではないかもしれません。
  一般的には、治療内容や料金については契約書、治療内容の説明やそれに対する同意については説明書・同意書といった名称の文書が作成されますが、タイトルは何でも構いません。重要なのは内容です。
  盛り込むべき具体的な内容についてですが、まず費用があります。インプラント治療等は100万円を超えることも珍しくないため、分割払いになるケースもあると思います。そのため、総額や分割方法についてはもちろん、場合によっては途中で治療が中止された場合の費用の計算方法も規定しておくと返金トラブルの回避のため有益かもしれません。もっとも、「お支払いいただいた診療費は理由の如何を問わず一切返金しません」のような、患者の利益を一方的に害する条項は消費者契約法により無効とされる可能性がありますので、注意が必要です。
  ところで、診療費全部または一部の支払時期が治療開始後になる契約の場合、不払いの危険が常にあることになります。資力のある患者であればよいのですが、例えば主婦のような、一般論として資力に乏しく、独自の資産をあまり有していない患者の場合は、万一診療費が支払われない場合、裁判等の法的手続を執っても最終的に回収できない可能性が高いといえます。そのため、例えば前金を多めに設定するとか、診療契約締結時に配偶者を連帯保証人にしてもらうなどの工夫があったほうがよいと思います。
  書面に盛り込むべき他の内容としては、治療内容とリスクの説明、それに対する患者の同意です。昨今、医療行為においては医師や歯科医師の患者に対する説明義務が強く求められる傾向にあります。特に、リスクについては事前に書面で具体的に説明し、患者から同意書をもらうべきです。書面化することによって、もしも紛争化した場合に立証が容易になります。
  形式としては、説明文書と別個に同意書をもらってもよいのですが、説明文書と同意欄が一体となったものを用意し、同意欄に患者から署名・押印をもらう方法が、説明内容とそれに対する同意の存在が一見して明らかになり、よいと思います。
  最後に、ご質問にある保証内容に関しては、おそらくインプラントの「○○年保証」のようなものを想定されているものと思われますが、法的な観点からいえば必須ではありません。一般に、歯科診療契約は準委任契約と解されており、結果や治療終了後の結果の維持を約束するものではありません。医療水準に達した適切な治療を行えば歯科医師は債務を履行したことになります。従って、結果を約束するかのような規定は必要ないばかりか、むしろ不適切とさえいえます。専ら営業上の理由で何らかの保証をすることが有益な場合もあると思いますが、その内容は慎重に検討する必要があります。

金田 英一銀座誠和法律事務所

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