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TopQ&A法律 > 中古建物の欠陥に対する賠償請求(2012年8月号)
Q&A
法律(2012年8月号)
Q 中古建物の欠陥に対する賠償請求
●昨年、中古建物を購入し、そこで開院しました。しかし、建物の構造上の欠陥からたび重なる雨漏りが起こり、日常診療に支障を来しています。購入時に欠陥の説明はなかったため、売主に対する損害賠償を考えています。賠償請求の可否や、請求時の注意点についてお教えください。
──千葉県・K歯科
A
  売主に対する損害賠償請求の根拠として考えられるのは、瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求と、債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償請求の2つの方法です。
  本件で問題となっている中古建物は個性のあるものであり、例えば同一規格で大量生産されている物のように、買主に対して他の代替物を提供することができません。このような代替不能な財物のことを、民法上「特定物」といいます。特定物の引き渡しについては、その引き渡しをすべきときの現状で提供すればよく、契約締結前から欠陥のある中古住宅を売ったとしても、売主は債務不履行責任を負いません。今回の中古建物に構造上生じているとされる雨漏りの原因が契約締結前から存在していた欠陥であるとすれば、一般論として、売主として提供すべきは欠陥のある中古建物そのものですので、そのような建物を提供したこと自体に債務不履行はないのです。
  しかし、このような結論を貫くと、欠陥のないものとして売買価格が決定された場合、欠陥ある現状と売買価格の間に潜在的な不均衡が生じていることになり、不公平です。
  そこで、民法は、主として特定物の売買契約を前提として、瑕疵担保責任の規定を設けました。瑕疵担保責任は、売買の目的物に「隠れた瑕疵(欠陥)」があった場合に、売主に落ち度がなくても、売主は買主に対して一定の賠償責任を負うとする制度です。「隠れた瑕疵」とは、取引上要求される一般的な注意では発見できない欠陥のことをいいます。
  今回の中古建物の欠陥は、建物の構造上生じている欠陥とのことですので、例えば契約締結前から壁や配水管に亀裂があることが外観上明らかであったなどの事情がないかぎり、建築や不動産の専門家ではない一般人である先生が瑕疵を容易に発見することは困難と考えられます。そうすると、今回の雨漏りの原因は「隠れた瑕疵」である可能性が高く、売主に対し、その欠陥によって発生した損害の賠償を請求することができます。ただし、瑕疵担保責任は契約によって排除することが可能ですので、契約書をよく確認する必要があります。もっとも、売主が瑕疵を知りながら買主に告げなかった場合は、瑕疵担保責任を排除する特約(免責特約)があったとしても、その効力は否定されます。
  瑕疵担保責任に基づいて損害賠償を請求するときには、原則として買主が欠陥を見つけたときから1年以内に請求する必要があります。この期間についても契約で変更可能ですが、例えば宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約においては、目的物の引き渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、民法の規定以上に買主に不利となる特約をできないなど、一定の制限がある場合もあります。
  瑕疵担保責任以外では、売主の説明義務違反による債務不履行ないし不法行為責任を追及することが考えられます。
  本件に即していえば、例えば売主が雨漏りの事実を知っていたにもかかわらずこれを買主に告げなかったり、売主が常識的な検査をすれば雨漏りの事実を容易に知ることができたにもかかわらずこれを怠った場合等には、売主に債務不履行ないし不法行為が認められる可能性もあります。
  なお、民法上、債務不履行に基づく損害賠償請求は債務不履行時から10年以内、不法行為に基づく損害賠償請求は損害及び加害者を知ったときから3年以内に行使する必要があります。

金田 英一銀座誠和法律事務所

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