片頭痛の病態仮説

 片頭痛の病態仮説としては、1984年にMoskowitzが提唱した「三叉神経血管説」という説が有力である。この説によると、視床下部を起原とする刺激が下行し、頭蓋内硬膜血管に分布する三叉神経第1枝眼神経の枝である硬膜枝の神経終末を刺激する。神経週末からCGRPやSubPなどの神経伝達物質が放出するとともに刺激は軸索を逆行性に末梢に進み、より広い範囲に、血管拡張や神経原性炎症を誘発する。一方、痛覚情報は順行性(中枢に向かう)に三叉神経節、脳幹内の三叉神経脊髄路核に至り、さらに高次の中枢へと投射される。
 片頭痛を歯痛と感じるのは、必要条件として、三叉神経第1枝眼神経の枝である硬膜枝で生じた頭痛信号が、上行する間に第2枝・第3枝と収束していることが挙げられる。三叉神経は収束していても、通常は末梢の第1枝(眼神経)、第2枝(上顎神経)、第3枝(下顎神経)の支配領域で生じた痛み信号をそれぞれに区別して感じている。そこに、十分条件として中枢感作が生じると3つの領域の交絡性が高まり、第1枝で生じた片頭痛の神経刺激により、第2枝、第3枝も敏感になり、反応性が亢進して関連痛が出やすい状況となり、いわば、脳が頭痛の信号を錯覚してしまうことによる。
【国際頭痛分類1.1 「前兆のない片頭痛の診断基準」】
A.B~Dを満たす頭痛発作が5回以上ある
B.頭痛の持続時間は4~72時間(未治療もしくは治療が無効の場合)
C.頭痛は以下の特徴の少なくとも2項目を満たす
 1.片側性
 2.拍動性
 3.中等度~重度の頭痛
 4.日常的な動作(歩行や階段昇降などの)により頭痛が増悪する、あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける
D.頭痛発作中に少なくとも以下の1項目を満たす
 1.悪心または嘔吐(あるいはその両方)
 2.光過敏および音過敏
E.その他の疾患によらない

デンタルダイヤモンド
2023年8月号
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