- 最近、当院ではIOSを導入し、これから積極的に使用していきたいと思っていますが、唾液や血液などの影響のためか、うまく印象採得できません。光学印象時、これらの水分汚染によるエラーを抑えられる手技を教えてください。 鹿児島県・U歯科医院
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1.光学印象のメリットとエラー因子
令和6年度歯科診療報酬改定で、CAD/CAMインレーが保険収載されたことにより、口腔内スキャナー(Intra Oral Scanner:以下、IOS)を用いた光学印象が広がりを見せています。
IOSは既存のアナログ印象と比較して、患者負担の軽減、テクニカルエラーの減少、感染予防、タイム&コストパフォーマンスのよさなど多くの利点を有していますが、発売当初より光学印象のエラーを引き起こす因子として、唾液・歯肉溝浸出液・血液などの水分による表面汚染が挙げられています1, 2)。
とくに下顎においては、唾液腺の開口部が近いことや、舌・頰粘膜などの軟組織の排除が困難な場面が多いことから、光学印象のエラーが生じやすいと感じます(図1)。2.水分汚染に対する配慮
支台歯周囲の水分汚染への対応策として、まずは歯肉溝からの出血や浸出液のコントロールが挙げられます。筆者は、光学印象前には必ず該当歯の歯肉圧排を行います(図2)。
次に、光学印象時の唾液による表面汚染を防ぐために、上顎であればエアブローやコットンロールなどによる簡易防湿、下顎ではバキュームやZOO(APT)による吸引防湿が推奨されます(図3、4)。
さらに近年では、海外論文を中心に「Digital scanning under rubber dam」という手法も報告されており3)(図5)、筆者の日常臨床においては、それぞれをシチュエーションに応じて選択しています。●
光学印象を自院で応用するにあたり、IOSは“魔法の杖” ではなく、アナログと違ったエラー因子が存在することを理解し、使用していくことが、質の高いデジタルデンティストリーを提供する鍵であると考えます。
【参考文献】 1) 植松厚夫:デジタルデンティストリーの実践.医歯薬出版,東京,2019.
2) 疋田一洋,馬場一美(編著):口腔内スキャナー入門デジタル印象採得の基礎と臨床.補綴臨床別冊,医歯薬出版,2019.
3) 柏木 了:Digital scanning under rubber dam:ラバーダム下の光学印象採得 ─デジタル時代の新しい手技とその考察─. QDT,49(6):21,2024.
柏木 了
●秋田県・柏木歯科
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学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2024年9月号より「光学印象のエラー因子を理解し、うまく印象するコツ」についてです。