舌骨のもつ二面性

舌骨には両手両脚がある。両手の茎突舌骨筋は共通するが、下方の両脚が異なっている。咀嚼系は肩甲舌骨筋、呼吸系は胸骨舌骨筋である。
舌骨がかかわる重要な機能に咀嚼と呼吸がある(a:呼吸系舌骨機能、b:咀嚼系舌骨機能)。両者とも機能の出発点としてのホームポジションが重要である(p.081・図27a参照)。舌骨が高位・低位にかかわらず、両者の舌骨機能は満足に働かない。aの呼吸系機能に関しては、三木成夫の示す直筋系であるが、bの咀嚼系は筆者の解析による咀嚼運動を示す。いずれも顔面神経支配の機能である。嚥下も含めて、縦と横に動く特徴的な動きは多くの反射によって構成されるが、いまだ未解明なことが多い。
◉呼吸系システムの微妙な制御
呼吸系システム(a)の場合、舌骨自体はわずかな上下の動きを伴う。吸気時は舌骨筋群が直筋系に従って収縮し、胸郭が挙上するが、反作用で舌骨はやや下降する。舌骨筋群は自由に動けば開口筋だが、舌が口蓋に接触した状態で舌骨筋群が収縮しようとすると、開口運動ではなく吸気運動になってしまう。しかし、吸気の直前に咬筋の収縮がわずかに認められ、「舌-口蓋反射」の作用で咬筋の伸展が抑制され、下顎固定が行われる。この結果として、開口せずに吸気作用が発動される。
この舌-口蓋反射は、軟口蓋に舌が触れていることが下顎固定の条件のため、舌骨のホームポジションが重要である。何らかの理由で舌根が軟口蓋から離れてしまうと、舌骨筋群の収縮は下顎を下降させ、舌口蓋封鎖ができなくなって口呼吸となる。
◉大臼歯の咀嚼系は舌骨を中心に動く
cはゴシックアーチトレーサー上の顎運動の軌跡である。赤は関節中心の下顎骨運動、青は舌骨が左右に動く影響を受けた軌跡である。従来の顎運動では、青で示す顎運動を理解不能として解説してこなかった。しかし、ほぼ全例でタッピングポイントから真横運動が観察される。矢崎の咬合器がこの動きを形として表現し、その咬合器で作られた義歯は実用に耐えて長持ちした。
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「舌骨のもつ二面性」についてです。