第65回秋季日本歯周病学会 学術大会が9月2日㈮、3日㈯、仙台国際センター(宮城県仙台市)で開催された(大会長:山田 聡氏・東北大院歯)。「世界を先導する歯周病学を目指して」をメインテーマに、多彩なプログラムが組まれた。
シンポジウムⅢ「EBMに基づいた歯周組織再生療法の現在と未来」
シンポジウムⅢ「EBMに基づいた歯周組織再生療法の現在と未来」では、3名が登壇。北村正博氏(阪大院歯)は、リグロスの適応症と臨床効果、効果を引き出すための手技的対応、骨補塡材との併用効果、使用による新たなリスクについて解説した。
中山洋平氏(日大松戸)は、リグロスと自家骨移植術の併用はリグロス単独よりも効果が認められ、リグロス使用時にモディファイドパピラプリザベーションテクニックを使用するとより効果的であり、残存歯数・Eichnerの分類・動揺歯の割合といった臼歯部の状態とリグロスの治療効果との関連性は弱かったと結論づけた。
大月基弘氏(大阪府開業)は、理想的な研究環境のもとで行われる、ある治療様式における追加的な臨床的利益を指す“efficacy”と、一般的な臨床的セッティングで得られる臨床的利益を指す“effectiveness”をキーワードに解説。20年以上用いられて使用方法も確立しているエムドゲインに比べ、リグロスは臨床的なエビデンスが不足していると指摘。一方で、リグロスは治癒過程でエムドゲインとは異なる臨床的動態を示すため、両者を適切に使い分けるためにさらなるエビデンスの蓄積が望まれると示唆した。
歯科衛生士シンポジウム「歯科衛生士による要介護高齢者の日常生活支援:その現状と課題」
歯科衛生士シンポジウム「歯科衛生士による要介護高齢者の日常生活支援:その現状と課題」では、3名のシンポジストが登壇しました。片桐美由紀氏(特別養護老人ホームまほろばの里向山)は、地域のなかで歯科衛生士ができることとして、口腔健康課題に目を向ける、高齢期のライフステージに合わせた歯科医療を提供する、人生の予後を見据えた歯科保健指導を行うことの3つを挙げました。そして、今後の役割として、社会の変化に合わせた歯科医療・歯科保健指導の実施、基礎疾患や薬剤などに関する医療職としての基礎力、増え続ける認知症患者への対応力、医療と介護・福祉の連携、口腔機能管理への対応強化、看取り期への対応などが求められると強調しました。
岸 さやか氏(仙台歯科医師会 在宅訪問・障害者・休日夜間歯科診療所)は、訪問歯科衛生士として、患者本人や家族の希望を最優先にした歯科治療や口腔健康管理を手段として、その人らしい生活を送れることを目標にする、介護する家族や多職種とともに患者を支援する、また多職種との情報共有を積極的に行うことが欠かせないと述べました。そして、まだ歯科訪問診療にかかわっていない方へのはじめの一歩として、地域の実態や医療・介護資源について把握し、気になることや気になる人について多職種に相談するとよいとアドバイス。今後は外来診療、入院、訪問診療でのシームレスで切れ目のない歯科×歯科連携が欠かせず、歯科衛生士同士でのやり取りができる仕組みや、顔の見える関係作りが必要と強調しました。