刊行にあたって:新たなる歯科用局所麻酔薬 アルチカインを知ろう!|本のエッセンス

刊行にあたって:新たなる歯科用局所麻酔薬 アルチカインを知ろう!|本のエッセンス

本のエッセンスは、書籍の「はじめに」や「刊行にあたって」に詰まっています。
この連載では、編集委員や著者が伝えたいことを端的にお届けするべく、おすすめ本の「はじめに」や「刊行にあたって」、「もくじ」をご紹介します。
今回は、新たなる歯科用局所麻酔薬 アルチカインを知ろう!です。

ゼネラルデンタルカタログ

刊行にあたって

 2025年1月21日に、ジーシー昭和薬品によって新しい歯科用局所麻酔剤が販売されました。販売名は「セプトカイン配合注カートリッジ」です。わが国では、2002年に販売されたスキャンドネストカートリッジ3%(メピバカイン製剤)以来、23年ぶりの歯科用注射用麻酔剤となります。有効成分の局所麻酔薬であるアルチカイン(Articaine)は、医科領域を併せてもわが国で初めて使用される歯科特有の薬物です。
アルチカインはリドカインと同じアミド型局所麻酔薬で、基本的な性質は他のアミド型局所麻酔薬と類似していますが、代謝が速く、毒性が比較的低く、安全域が広い、という特徴を有しています。
 アルチカインを含有した歯科用局所麻酔剤(アルチカイン製剤)は、1976年にドイツ、スイス、1984年にカナダ、2000年に米国で導入されており、わが国はドイツやスイスから半世紀、米国やカナダから四半世紀遅れて導入されたことになります。すでに多くの国で使用されており、世界的にはリドカイン製剤と並んで使用されている代表的な歯科用局所麻酔剤です。アルチカイン製剤の製造元はカナダのノボコール社ですが、この会社はフランスのセプトドント社(Septodont Inc.)の傘下の会社であるため、実質的にはセプトドント社で日本市場用に製造したものを輸入しています。北米での販売名が“Septocaine”であるため、わが国でもその名称を引用しています。
 セプトカインがわが国で販売されるに至った経緯については、まず、昭和薬品化工(現 ジーシー昭和薬品)およびセプトドント社の支援を受け、2014年より岡山大学病院でセプトカインをわが国に導入するためのプロジェクトが始まりました。その後、岡山大学病院で医師主導治験として第I相試験(2016年10月~2017年3月)、全国11施設で第Ⅱ相試験(2018年12月~2019年9月)、さらに全国10施設で第Ⅲ相試験(2021年6月~2022年9月)が実施されました。これらの試験結果に基づいて、2023年8月にジーシー昭和薬品が医薬品医療機器総合機構(PMDA)に医薬品の承認申請を行い、2024年9月に薬事承認、2025年1月に販売となりました。
 セプトカインの登場によって、これまで使用されてきたリドカイン製剤、プロピトカイン製剤、メピバカイン製剤を凌駕し、この一剤によってすべて置き換わるというものではありません。歯科用注射用局所麻酔剤の新たな選択肢が増えたという解釈が正しいといえます。
 本書は、アルチカイン自体やアルチカイン製剤であるセプトカインの特徴を解説し、どのような症例や処置であれば本製剤が適しているか、また逆に適していないか、これまで使用されてきた歯科用局所麻酔剤とも比較しながら、読書の皆様にセプトカインを知ってもらうことを目的に制作しています。
 本書が、臨床の場で本製剤を使用する際の基礎知識として役立つことを願っております。

2025月7月
宮脇卓也

もくじ


新たなる歯科用局所麻酔薬 アルチカインを知ろう!

編著者略歴

宮脇卓也(みやわき たくや)

1986年 岡山大学歯学部 卒業
2007年 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 教授
    (現・学術研究院医歯薬学域 歯科麻酔・特別支援歯学分野)

(所属学会)
日本歯科麻酔学会
日本有病者歯科医療学会
日本障害者歯科学会
日本麻酔科学会


砂田勝久(すなだ かつひさ)

1984年 日本歯科大学歯学部 卒業
2007年 日本歯科大学生命歯学部 歯科麻酔学講座 教授

(所属学会)
日本歯科麻酔学会
日本有病者歯科医療学会
日本障害者歯科学会
日本歯科薬物療法学会


新たなる歯科用局所麻酔薬 アルチカインを知ろう!