Dd診断力てすと『下顎歯肉の腫脹』デンタルダイヤモンド 2022年01月号

4.エナメル上皮腫

エナメル上皮腫は、わが国では歯原性腫瘍のなかで最も頻度の高い上皮性歯原性腫瘍で、WHO組織分類(2017)において「エナメル上皮腫」、「エナメル上皮腫、単嚢胞型」、「エナメル上皮腫、骨外型/周辺型」に大別された。

「エナメル上皮腫、骨外型/周辺型」では歯肉などに生じるエナメル上皮腫であり、歯肉部や無歯顎の顎堤に限局して腫瘤を形成し、軽度の骨吸収を認めることもある。

自験例は肉眼的所見およびパノラマX線写真から悪性腫瘍ないしエナメル上皮腫を疑ったものの、生検結果では乳頭腫が最も疑われた。摘出標本の病理診断から、悪性腫瘍は明確に否定され、また、腫瘍の大部分が下顎骨に存在し、骨膨隆および皮質骨の吸収を伴っていた。このことから、「エナメル上皮腫、骨外型/周辺型」ではなく、「エナメル上皮腫、単嚢胞型」と考えられた。乳頭腫と思われた歯肉病変は、腫瘍が骨外に進展したことによって被覆粘膜に炎症が惹起され、反応性に生じた乳頭状過形成であると考えられた。

処置および経過

初診時に生検を施行したが、明確な診断が得られず、悪性所見も否定できないことから、精査加療依頼にて大学病院歯科口腔外科へ紹介した。歯肉と顎骨内それぞれから生検を施行したところ、乳頭腫および良性腫瘍との診断であったが、同定は困難であった。全身麻酔下に腫瘍摘出術を施行し、2つの病変を一塊として摘出した。術後19日目に退院し、術後2年経過しているが、再発はなく、紹介元歯科口腔外科にて補綴処置まで完了した(図❹)。

病理組織学的診断

乳頭腫と思われた病変とエナメル上皮腫が連続する所見を認め、歯肉病変の上皮表面の突起には過錯角化や過正角化の所見がなく、直下に高度の炎症性細胞浸潤を認めた。

また、突起に接してエナメル上皮腫の所見を認め、乳頭状過形成を伴ったエナメル上皮腫の診断であった(図❺)。

図❹ 術後1年の口腔内写真

図❷ 病理組織像(H-E染色)

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