- 当院に新しい事務スタッフがフルタイムの正社員として入りました。事務職の経験が豊富で即戦力になることを期待していたのですが、入社後3ヵ月時に義理の父が倒れ、要介護状態になってしまったとのことです。そして、先日、介護休暇を希望してきたのですが、入社後間もないことを理由に断ることはできるのでしょうか。また、当院ではまだ認めていない在宅勤務(テレワーク)の希望があった場合、それも断ることができるのでしょうか。 石川県・Y歯科
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育児・介護休業法上の介護のため仕事を休む制度は、「介護休暇」と「介護休業」の2種類があります。
介護休暇は、対象となる労働者が要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族の介護や世話をするための休暇制度です。
対象となる労働者は、日雇いを除く全労働者です。労使協定を締結している場合、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者を対象外とすることが可能です。以前は、これに加え入社6ヵ月未満の労働者も対象外とすることが可能でしたが、法改正により、2025年(令和7年)4月1日から不可能となりました。したがって、入社後間もないことを理由に介護休暇の取得を断ることはできません。
対象家族は、配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含みます)、父母および子(これらの者に準ずる者として、祖父母、兄弟姉妹および孫を含みます)、配偶者の父母です。
「2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」とは、①介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること、②座位保持や歩行状態等について所定の要件を満たすこと、のいずれかに該当する場合とされています。
ご質問のケースについてですが、義理の父は対象家族に含まれます。また、当該スタッフはフルタイムの正社員ですので、対象となる労働者です。そのため、義理の父の状態が前述の①、②のいずれかに該当する場合、当該スタッフの介護休暇の取得を拒否することはできません。もっとも、対象家族が1人の場合の取得可能な日数は年5日と多くなく、また就業規則等で特段の定めがないかぎり、介護休暇中は無給です。そのため、診療所の運営上、さほど大きな支障は生じないのではないかと思われます。
次に介護休業についてです。介護休業は、介護のための長期休暇を取ることができる制度です。
対象家族の範囲や常時介護状態の判断基準は、介護休暇と同様です。
対象となる労働者は、日雇いや要件を満たさないパート・アルバイトを除いた全労働者です。もっとも、労使協定により、入社1年未満の労働者、介護休業の取得の申出日から93日以内に雇用期間が終了する労働者、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者は、対象外とすることが可能です。
これらの要件を満たす場合、労働者は、対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業することができます。通算ですので年度が変わっても増えることはありません。
介護休業中は、介護休暇と同様に原則無給です。もっとも、雇用保険の被保険者で一定の要件を満たす場合、介護休業給付金が支給されます。
最後にテレワークについてです。2025年(令和7年)4月1日から、要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、事業主の努力義務とされました。そのため、当該スタッフから介護のためテレワークの希望があった場合、認めるよう努力すべきですが、拒否することは可能であり、拒否しても罰則はありません。井上雅弘
銀座誠和法律事務所

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学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2025年5月号より「勤続6ヵ月未満のスタッフの介護休業は認められる?」についてです。