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刊行にあたって
筆者は常々、歯科衛生士業務における「聖書」になるような書籍が必要であると考えていた。歯科衛生士は、基本的に予防業務を担当する。医療全般にいえることだが、「予防」は「治療」よりも難しい場合が多く、問題が起きた場合に歯科衛生士が責められることも少なくない。予防には高度な知識と経験が必須であり、そうした知識がない状態で予防を行うのは非常に危険である。そこで、歯科衛生士業務を解説すべく、筆を執ることにした。
なお、歯科衛生士業務については、歯科衛生士が知る前に、歯科医師こそ知るべきであると強く信じている。顕微鏡(マイクロスコープ)を医院に導入し、本気で顕微鏡を使ったメインテナンスをさせたいと願うのであれば、院長こそ真っ先に本書を読み、内容を理解する必要があるだろう。
いうまでもなく、本書で解説する内容は、顕微鏡の使用を前提にしている。そして、筆者が開発し、実践している直視の顕微鏡応用テクニック「スリーステップ秋山メソッド」を応用したものである。本書のなかでも「スリーステップ秋山メソッド」の概要を述べているが、より基本的な部分から理解したい場合は、前作『スリーステップ秋山メソッドBASIC 最低倍率でも大きなメリットがある顕微鏡テクニック』を読むことを強く推奨する。スリーステップ秋山メソッドは、“新しい”概念に基づいたテクニックであり、世界レベルの、非常に高い精度の歯科治療を実現できる。
筆者は歯科医師であるが、同時に顕微鏡を駆使した歯科衛生士業務にも30年以上従事している。「職業・歯科衛生士」と名乗ってよいほど、日々の診療における歯科衛生士業務の割合は高い。当然、治療が必要になれば歯内療法・補綴・保存・歯周病・インプラント・全顎の歯列矯正などすべての治療を顕微鏡下で行っている。歯科医療すべての分野を顕微鏡下で治療できる、非常に稀な歯科医師といえる。
本書の執筆にあたって、自身の歯科衛生士としての臨床成績を検証したところ、無作為に選んだ30名のメインテナンス患者(平均メインテナンス期間24年)において、知覚過敏ゼロ、歯周病再発ゼロ、抜歯数4本であった。筆者のメインテナンス患者は、その人生において不快な状況は起きず、ほとんど歯を失わないという結論になった。筆者の歯科衛生士としてのスキルは世界最高水準だと自負しているが、臨床現場でトラブルが起きないわけではない。トラブルが起きたとしても、そのほとんどを解決しているので歯が保存されているのである。本書で述べるノウハウを身につければ、筆者のように、トラブルを回避できるだろう。
一般的に多くの教科書の解説は、ピンポイント的なものがほとんどで、エビデンス論文の羅列だとその本質が見えてこない。つまり、点が線にならないと歯周病やカリエスの病態について理解できない。理解できなければ効率的な予防方法もわからない。そこで本書は、エビデンスベースで点を繫げて線にすることですべて理解できるような解説を心がけている。
本書がすべての歯科医療従事者にとっての福音になることを願っている。
2025月3月
秋山勝彦
CONTENTS


秋山勝彦(あきやま かつひこ)
1985年 東京歯科大学 卒業
2004年 日本臨床歯周病学会関東支部教育研修会にて講演
2005年 ハーバード大学歯学部ITI 共催によるケースプレゼンテーションアワード受賞
2006年 第3回日本顕微鏡歯科学会 特別講演
第24回日本臨床歯周病学会年次大会で、歯周病治療に対して
顕微鏡の直視の応用方法を世界で初めて発表
JIADS 総会(大阪) 発表
第5回アメリカ顕微鏡歯科学会(アリゾナ州ツーソン) 発表
2007年 第6回アメリカ顕微鏡歯科学会(アリゾナ州ツーソン) 講演
ミナミアルプストレーニングインスティテュートフォー
マイクロデンティストリーを開設
2008年 第5回日本顕微鏡歯科学会 教育講演
第7回アメリカ顕微鏡歯科学会(スコッツデール) 講演
2010年 第9回アメリカ顕微鏡歯科学会(サンタバーバラ) 講演
2011年 第8回日本顕微鏡歯科学会 講演
2012年 CARL ZEISS 本社ドイツ・オーバーコッヘンにて講演
KLS Martin 本社ドイツ・トットリンゲン社にて講演
ネパール、カトマンズ・Kantipur Dental College のCEO の要請で
個人的な国際ボランティアとして、ネパールのペリオドンティスト
および開業医・大学職員・歯科衛生士・歯科学生に対して、
3日間にわたり歯周治療について講演
2013年 第14回ブラジル歯科医師会(Canela-RS, Brazil) 講演
第12回アメリカ顕微鏡歯科学会(フロリダ州オーランド) 講演
2014年 MATI 出版より『The Micro Endoscopic Technique』販売開始
アメリカ、ニューヨークのコロンビア大学Perio Residents にて
「手術用顕微鏡を応用した歯周治療について」講義
2016年 臨床応用顕微鏡歯科学会 設立
2024年 CARL ZEISS 本社ドイツ・オーバーコッヘンにて講演。
ドイツ人歯科医師、CARL ZEISS 社員にハンズオンコースを開催
第110回アメリカ歯周病学会(サンディエゴ)にて世界の中から
感謝すべき10人のペリオドンティストに選ばれる
(所属学会)
Academy of Surgical Microscopic Clinical Dentistry Member
American Academy of Periodontology International Member(AAP)
The Japanese Society of Periodontology Member
The Japanese Academy of Clinical Periodontology Member
The Japanese orthdontic of Society Member
本のエッセンスは、書籍の「はじめに」や「刊行にあたって」に詰まっています。
この連載では、編集委員や著者が伝えたいことを端的にお届けするべく、おすすめ本の「はじめに」や「刊行にあたって」、「もくじ」をご紹介します。
今回は、『マイクロメインテナンス秋山メソッド』です。