本のエッセンス|刊行にあたって:ある日突然やってくる困った患者さん2「あなたにも、治せる⁉」

ある日突然やってくる困った患者さん2「あなたにも、治せる⁉」

本のエッセンスは、書籍の「はじめに」や「刊行にあたって」に詰まっています。
この連載では、編集委員や著者が伝えたいことを端的にお届けするべく、おすすめ本の「はじめに」や「刊行にあたって」、「もくじ」をご紹介します。
今回は、ある日突然やってくる困った患者さん2「あなたにも、治せる⁉」です。

ゼネラルデンタルカタログ

刊行にあたって

 ある静かな朝に一通のメールが届いた。
 「先生、治療に近道はありませんでした」
 3ヵ月前に「また連絡します」とキャンセルの連絡があった50 歳の女性患者からである。彼女は咬み合わせが合わない、顎が痛い、手がしびれるなど多種にわたる全身症状を主訴に、1年半前に来院した。10 年前に上顎にブリッジを装着したことにより咬合違和感が生じ、多くの歯科医院を転々とした。そして次々と歯が割れて抜歯となった結果、上顎は総義歯、下顎は局部床義歯となっていた。1年半治療を行ったが、症状は改善せず来院が途絶えた。その後、他の歯科医院へ行ったが、やはり思うような結果が出なかったのであろう。このような患者をすっきりと治すことは難しい。
 本書は、2019 年に上梓した拙著『ある日突然やってくる困った患者さん「あなたなら、どう診る?」』の続編としてまとめられた。前著は、歯科医師だけでなく、スタッフが夢中で読んでいるという話をたくさんいただいた。おそらくは歯科医師よりも、スタッフのほうが身近でいろいろな被害に遭っているのであろう。しかし、ここに出てくるさまざまな「困った患者さん」は、当然、読者の皆様に実際に被害を及ぼすわけではない。「人ごと」として読み進めることができる。
 この「人ごと」というのが大事なポイントである。
 実際にこのような患者に出会ったときに必要なのは、いかに状況を第三者として俯瞰してみられるかである(心理学ではメタ認知という)。また、人は他人が行っていることを見ているとき、脳の中では行っている人と同じ脳の部分が活性化している(ミラーニューロンという)。
 つまり、本書を読み進め、さまざまな「困った患者さん」の実態を知ることで、脳レベルではすでに「困った患者さん」と出会ったときの準備が行われているのである。
 落とし穴に落ちない方法は、落とし穴の存在を知ることである。
 本書が、読者諸兄が落とし穴に落ちないための道しるべとなれば幸いである。

2024年3月
島田 淳

CONTENTS


ある日突然やってくる困った患者さん2「あなたにも、治せる⁉」 もくじ

監修者略歴

島田 淳(しまだ あつし)

1987年 日本大学歯学部 卒業
1991年 日本大学大学院歯学研究科 補綴学専攻 修了(歯学博士)
    日本大学歯学部助手 補綴学教室 局部床義歯学講座
1993年 日本顎関節学会学術奨励賞 受賞
1995年 日本大学助手 補綴学教室 局部床義歯学講座
1999年 東京歯科大学講師 スポーツ歯学研究室
    東京歯科大学水道橋病院 顎関節・咬み合わせ・はぎしり外来
2005年〜 医療法人社団グリーンデンタルクリニック 理事長
    東京歯科大学スポーツ歯学研究室 非常勤講師
2008年 神奈川歯科大学附属病院 かみ合わせリエゾン診療科 非常勤講師
2012年〜 日本顎関節学会 理事
2017年 神奈川歯科大学 臨床教授 全身管理医歯学講座 顎咬合機能回復補綴医学分野
2020年 神奈川歯科大学 特任教授
2022年~ 日本顎関節学会 常任理事

日本補綴歯科学会 補綴歯科専門医・指導医
日本顎関節学会 歯科顎関節症専門医・指導医・常任理事
日本口腔顔面痛学会 口腔顔面痛専門医・指導医・評議員
日本歯科心身医学会 代議員

ある日突然やってくる困った患者さん2「あなたにも、治せる⁉」 表紙