Q&A 法律 歯科用機器の個人間における売買・譲渡時の注意点|デンタルダイヤモンド 2025年8月号

Q&A 法律 歯科用機器の個人間における売買・譲渡時の注意点|デンタルダイヤモンド 2025年8月号

学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2025年8月号より「歯科用機器の個人間における売買・譲渡時の注意点」についてです。

歯科用ハンドピースの買い替えで、以前使っていた古い機種が必要なくなりました。しかし、破棄するのはもったいないので、知り合いの歯科医師に安く売る、もしくは無償で譲渡しようと考えています。法律上、注意すべき点がありましたら教えてください。ちなみに、ハンドピースは耐用年数を過ぎていません。 北海道・L歯科医院

 医療機器の販売・授与等に関しては、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)等により、一定の規制があります。
 医療機器は、人体へのリスクの程度により、4段階に分類されています。人体に影響を与えるおそれがほとんどないものは「一般医療機器」(国際分類ではクラスⅠ)、人体に影響を与えるおそれがあるものは「管理医療機器」(クラスⅡ)、人体に重大な影響を与えるおそれがあるものは「高度管理医療機器」(クラスⅢ・Ⅳ)とされています。
 また、人体へのリスクの高低による分類とは別に、「特定保守管理医療機器」に該当するものがあります。特定保守管理医療機器とは、医療機器のうち、保守点検、修理その他の管理に専門的な知識および技能を必要とし、適正な管理が行われなければ疾病の診断、治療または予防に重大な影響を与えるおそれがあり、厚生労働大臣が指定するものと定義されています。
 医療機器を業として販売、授与または貸与等する場合、前述の分類に応じて規制が設けられています。具体的には、高度管理医療機器については都道府県知事等の許可、管理医療機器については都道府県知事等への届出が必要です。一般医療機器については許可・届出は不要ですが、一般医療機器であっても特定保守管理医療機器に該当するものについては、都道府県知事等の許可が必要です。
 ご質問の歯科用ハンドピースは、医療機器に該当します(機械器具61)。分類は、たとえばガス圧式、電動式、空気駆動式等の仕様の違いや商品によって異なることもあるようですが、一般的には管理医療機器、かつ、特定保守管理医療機器に該当します。
 したがって、歯科用ハンドピースの業としての販売・授与等については、都道府県知事等の許可が必要です。なお、医療機器の正確な分類は、当該医療機器の添付文書に記載されていますので、ご自身で確認が可能です。
 歯科用ハンドピースの販売・授与等に許可が必要となる場合の「業として」とは、一般に、反復継続する意思をもって、社会通念上、事業の遂行とみることができる程度の行為をいうとされています。意思に着目して判断されますので、たとえ客観的には1回だけの販売・授与等であったとしても「業として」と評価される可能性があります。
 ご質問のケースでは、過去にも必要がなくなった医療機器(販売等に許可・届出が必要なもの)を販売・授与等していた場合は、今回の販売・授与も「業として」に該当する可能性が高いといえます。たとえ今回が初めてであったとしても、今後も使用している医療機器が古くなり、必要がなくなることはあり得るのですから、その際も今回と同様に販売・授与する意思があると判断され、「業として」に該当すると評価される可能性はあります。
 薬機法違反となるリスクの観点からは、歯科用ハンドピースは、販売・授与するのではなく、しかるべき方法で廃棄するほうが安全です。
 なお、許可を得て高度管理医療機器または特定保守管理医療機器の販売業者等となった場合、中古品の医療機器を他に販売・授与等しようとするときは、原則として、あらかじめ、当該医療機器の製造販売業者に通知する必要があります(薬機法規則170条1項)。

井上雅弘
銀座誠和法律事務所


デンタルダイヤモンド 2025年8月号 表紙

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