Q&A 矯正 矯正歯科治療を考慮したインプラント埋入のタイミング|デンタルダイヤモンド 2025年6月号

Q&A 矯正 矯正歯科治療を考慮したインプラント埋入のタイミング|デンタルダイヤモンド 2025年6月号

学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2025年6 月号より「矯正歯科治療を考慮したインプラント埋入のタイミング」についてです。

咬合再構成のためにインプラント治療と矯正歯科治療を併用する場合、インプラントの埋入位置をどのようにして決定すればよいのでしょうか。また、インプラントの埋入時期として、矯正前、矯正中、矯正後が考えられますが、それぞれのメリット・デメリットを教えてください。 埼玉県・M歯科

1.インプラントの埋入位置
 インプラント治療と矯正歯科治療(以下、矯正治療)の併用による咬合再構成のケースは、今後ますます増加していくものと考えられます。そのなかでもっとも難しい課題の1つとして、「インプラントの埋入位置をどこに決定するか」が挙げられます。
 インプラントは不動体であるため、植立後にその位置の変更は不可能となります。そのため、現在では治療後の状態をシミュレーションし、最初に理想的な位置を決定することが重要視されています。
 とはいえ、咬合再構成の際には、既存の歯の水平的・垂直的な位置を変化させなければならないことが多いため、かつては、シミュレーションモデルから計画されたインプラントの埋入位置を、どのように術前の歯列に反映させてサージカルガイドを作製するかが課題でした。
 結果的には術者の経験などにより、シミュレーションされた位置に比較的近い場所へ埋入することはできたものの、正確性という点ではかなり劣っていました。
 そこで、伝法ら1)はセットアップモデルを活用してのサージカルガイドの作製方法を発案し、これによりシミュレーションどおりの位置への正確な埋入が可能となりました。この方法は、現在ではデジタルシミュレーションによりかなり簡素化されましたが、IOSまたはモデルスキャナー、シミュレーションソフトおよび3Dプリンターなどが必要になります。
2.インプラントの埋入時期
 埋入時期は、その部位における骨の解剖学的な条件(骨量、骨幅および高さなど)と隣在歯との間隔(距離)、矯正治療における固定源の必要性によって考慮することになります(表1)。
 骨の解剖学的な条件が整っており、かつ、隣在歯との距離が十分に確保できる場合は、動的矯正処置前の埋入が可能となります。
 骨の解剖学的な条件が整っておらず、それらが矯正処置(抜歯によって骨の高さが不十分になってしまう場合における矯正的挺出後の抜歯や、骨幅が狭い部位における隣在歯の移動など2))により改善できる場合や、隣在歯を移動しなければ距離を十分に確保できない場合などは、動的矯正治療中や直後の埋入が推奨されます。
 一方、前述のようにインプラントは不動体であり、矯正治療において強力な絶対的固定源として用いられるという側面があるため、固定源の確保が必要とされる場合は動的矯正治療の開始前に埋入すべきです。
 なお、抜歯の判定が術前に不可能などの理由により、術前シミュレーションができない場合などでは、現存歯の配列などを先に行い、その後にインプラントの埋入を行うことも考えられます。

表❶ インプラントの埋入時期におけるメリット・デメリット
【参考文献】

1) 伝法昌広,土屋賢司:矯正が先か? インプラントが先か? セファロ、セットアップモデルを活用した治療計画立案.デンタルダイヤモンド,43(11):25-43,2018.
2) 宇塚 聡,他:Longevityに繫がるLOT活用術 ターゲット10.デンタルダイヤモンド社,東京,2019:86-93.

髙橋正光
東京都・髙橋歯科矯正歯科


デンタルダイヤモンド 2025年6月号 表紙

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