- 近い将来に開業することを見据えながら勤務しています。ですが、どのような規模で、どういった歯科医院にしたいのか、まだ迷っている状態です。いまでも、施した治療に対して不満を抱く患者さんがいるため、開業し、院長としてうまくやっていけるか、非常に不安があります。開業するまでの心構えなどはありますか。 岐阜県・S歯科医院
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1.「開業したい」という強い意識をもつ
厚生労働省が行う、歯科医院数に関する昨今の調査結果の傾向をみますと、年々個人経営の診療所は減少し、一方で医療法人の診療所が増加する傾向が続いています。さらに、歯科医院一軒あたりの平均収入金額においては、個人診療所は減少し、医療法人は増加する結果となっています。つまり、1軒あたりの歯科医院の規模が大きくなり、患者さんが集中してきている一方で、それほど規模が大きくない歯科医院では、患者さんの確保や収入確保は、かなり厳しい状況にあるということでしょう。
分院をいくつも開業するなど、歯科医院が大型化すると、勤務する歯科医師の選択肢の一つとして、分院長として管理者報酬を得て一つの事業所を長く担うことも増えてきます。そうした現状において、自ら独立して開業の道を選択しようとすることは、自身の開業に対する強い意志が必要です。給与所得者であるスタッフの立場から、事業所得者へと身を転じる際は、歯科医療を通じて実現したい姿を描き、「開業をできたらする」あるいは「開業したい」という希望的な意識から、「私はこのために開業するのだ」という決意への変化が重要なポイントです。
チェアーや歯科衛生士を多く確保して臨む予防型の歯科医院であっても、あるいは保険医療機関の指定を受けず、チェアー1台、自費診療のみで開業する歯科医院であっても、真に信頼してくれる患者さんがいる一方、治療内容に不満を感じて離れていく患者さん、さらには不平不満をぶつけてくる患者さんをなくすことはできないでしょう。
また、スタッフを雇用すれば、入職するスタッフがいる一方、気がつけば名前すら思い出せずに退職していったスタッフも、数えきれないほどいるわけです。それでも開業しようとするのは、「これをしたい」、「こうありたい」という強い意識があるからに他なりません。
2.患者さんからの信頼を得るために
現在は物件情報や立地条件の評価など、多くの情報を利用して、より詳細・正確に物件の選定ができる状況です。
医療機器も先進化が進み、チェアーの機能向上のほか、マイクロスコープやCTの性能も素晴らしいものになっています。小型医療機器の精度や材料の品質が上がるなど、先生の技術をより高めるためのツールは充実してきています。つまり、患者さんの治療に対する内容を、明確な根拠を提示しながら説明できる環境は十分に整っています。そして、患者さんに治療提供できる設備機器等も、綿密な事業計画によって導入することが可能な時代です。
患者さんは、ホームページやSNSなどを通じて、歯科医院の情報をより多く得たうえで通院しますが、通院前に得た情報と実際に通院して得られた実感との差が小さいと、安心感を抱き満足度の向上に繫がります。したがって、医院が提供する情報を、みんなで実現できるスタッフ教育の仕組みや方法を考え、実践に繫げることが大切です。
患者さんからの信頼を得るには、例外なく患者さんに対する目配りや気配りが行き届いている状態が必要です。
現在、勤務する歯科医院において、今後、開業した際に同じように対応できるかどうか、患者さんが信頼を寄せる歯科医院のかたちは何かを考えるために、勤務医時代のいまを大切に過ごしてください。門田 亮
●デンタル・マネジメント・コンサルティング

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学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2025年4月号より「開業に向けた心構え」についてです。