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『おうさまのおひっこし』
一般的に、絵本は子どものものと思われがちですが、そうではありません。子どもだけではなく、大人だって同じ絵本を楽しく読めます。そこに年齢は関係ありません。多くの絵本が、手にする人の知識や経験の蓄積を前提とせずに作られているからです。だから、幼い子どもからご高齢の方まで、同じ作品を一緒に楽しむこともできます。今月は、そんな絵本の特性をしっかり備えた作品『おうさまのおひっこし』をご紹介します。
遠い国に建つ小さなお城に、王さまと6人のおともたちが住んでいました。王さまは優しい方で、困っている人を見るといつも手助けしようとしました。でも、ちょっぴり恥ずかしがりで口下手なため、命令がおともたちにうまく伝わりません。そのうえ、おともたちは慌てんぼうばかりだったので、命令を勘違いしては、ヘンテコなことばかりしていました。
ある晩、王さまは小さなベッドで6人一緒に眠るおともたちを見て、もっとゆっくり寝かせてあげたいと思い、大きなベッドを作るよう命じました。でも、おともたちが作ったのは、王さま用のベッドでした。しかも、あまりに大きく作りすぎたので、どうしてもお城に入れることができませんでした。
そこで王さまは、大きなお城に引っ越すことにしたのですが……。
ある晩、王さまは小さなベッドで6人一緒に眠るおともたちを見て、もっとゆっくり寝かせてあげたいと思い、大きなベッドを作るよう命じました。でも、おともたちが作ったのは、王さま用のベッドでした。しかも、あまりに大きく作りすぎたので、どうしてもお城に入れることができませんでした。
引越しの道中も、王さまの命令を勘違いしてばかりのおともたち。痩せたヤギにエサをやるよう言われたら、ソファを壊して中の干し草を与え、雨に濡れた少年に、乾いた服を着せるよう命じられると、なぜか街中の銅像に服を着せて回りました。それでも王さまは、誰かが喜ぶならそれでよいと満足していました。最後には、小さなベッド以外のすべての荷物を失ってしまうのですが、心配はご無用です‼ 寛大な王さまと、王さまを慕うおともたちに、とびきり幸せな結末が待っているのです。おとぎ話のような物語が生む「幸せな読後感」と、美しい絵が相まって、待合室にふさわしい、誰もが楽しめる作品になっています。
おひさま堂 書籍部
大橋悦子
歯科衛生士向け月刊誌『DHstyle』より、歯科医院の待合室にぴったりの素敵な絵本をご紹介いたします。今回は、『おうさまのおひっこし』です。