1.適切な診断のために 抜歯後の疼痛や治癒不全としては、ドライソケットが鑑別診断に挙がります。ドライソケットは、抜歯窩に正常な血餅が形成されず、骨面の露出した状態が持続するため、激しい痛みを引き起こします。とくに、骨吸収抑制薬の投与歴がある患者において、局所的なドライソケット治療後も疼痛が改善せず、排膿や骨の露出が続く場合は、MRONJ(Medication-related osteonecrosis of the Jaw)の発症が強く疑われます。 MRONJの診断には、患者の既往歴、注射歴、内服薬の確認が極めて重要です。たとえ「お薬手帳」に骨吸収抑制薬が記載されていなくとも、骨粗鬆症やがん(乳がん、前立腺がん、多発性骨髄腫など)の既往がある場合、また、膠原病の治療でステロイド服用中の患者には、とくに注意が必要です。 さらに、口腔がんや咽頭がんなどにより顎骨へ放射線が照射されている場合、放射線性顎骨骨髄炎の可能性も否定できず、頭頸部の悪性腫瘍疾患の既往について確認する必要があります。 抜歯前にはMRONJ発症リスクに関する十分なインフォームド・コンセントが重要です。また、インフォームド・コンセントを実施したからといって、MRONJが発症した際に問題が解消されるわけではありませんので、その後の適切な対応が必要になります。
学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2025年7月号より「MRONJが疑われたときの対応」についてです。