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刊行にあたって
教科書は三次資料であるため、急速な時代の流れに追従するのは難しく、また、わが国の急速な高齢化に即した特殊性を加味するのもたいへんです。一方で、一次資料である研究論文数は雑誌数も含めて増加の一途を辿り、使用可能な医薬品・医療機器も増え続けています。
そこで本書では、歯周病学・歯周治療に関してアカデミアと臨床医が協力して現状を把握し、今後の課題を読者と共有する目的で、『歯周病の新分類対応 アップデート・ザ・ペリオ~超高齢社会へのアプローチ~』と題してとりまとめました。
歯周病の新分類も含めて、一次資料(論文)レベルで知っておくべき最新の情報をアップデートするとともに、臨床医の先生方にも長期症例から得た知見を提示していただきました。また、新たな切り口として、副題にもあるように、超高齢社会がすでに到来しているわが国における、歯周治療の注意すべき事項も多く取り上げています。
私自身も臨床で悩む場面は多いです。最近、患者に質問されたこととして、「骨粗鬆症治療薬を服用しているが、歯周外科治療は受けられるのか」というものがあります。以前は休薬してもらったり、観血的な処置を避けたりする傾向にありました。日本口腔外科学会を中心に提案されている、最新の「薬剤関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023」(案)によると、現状では「休薬しないことを弱く提案する」とされています。ここから、感染原因の除去処置、たとえば抜歯や歯周治療は積極的に行うほうがよいのではないか、という流れが読み取れます。
もちろん、患者の全身状態や服薬履歴、薬剤濃度など考慮すべき点は多く、最終判断は担当医が行うしかありません。しかし、ガイドラインは時代とともに変遷するものです。今後、有病高齢者への対応がますます求められるのは自明であり、歯周炎を有する残存歯が増加している昨今、適切なホームケアとプロフェッショナルケアが両輪となって歯周炎と対峙していかなければなりません。これらを考慮し、低侵襲な処置やメインテナンス方法をトピックスとして取り上げました。現行での一提案であり、今後、サイエンスによって覆されるかもしれませんが、ご参考になれば幸いです。
最後に、ご多忙にもかかわらず編集委員を引き受けてくださった多部田康一教授(新潟大学大学院)と土岡弘明先生(千葉県開業)、ならびに執筆していただいた先生方、デンタルダイヤモンド社の宮口 城様に厚く御礼申し上げます。
2023年3月
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 歯周病学分野
岩田隆紀
CONTENTS
岩田隆紀(いわた たかのり)
1998年 東京医科歯科大学歯学部卒業
2002年 東京医科歯科大学大学院修了(歯学博士)
2002年 東京医科歯科大学歯学部附属病院 医員
2004年 University of Michigan, Postdoctoral Fellow
2007年 東京女子医科大学先端生命医科学研究所(兼)歯科口腔外科 特任助教
2010年 東京女子医科大学先端生命医科学研究所(兼)歯科口腔外科 特任講師
2014年 東京女子医科大学先端生命医科学研究所(兼)歯科口腔外科 准教授
2019年 東京医科歯科大学大学院 歯周病学分野 教授
現在に至る
日本再生医療学会、日本歯周病学会、口腔病学会、日本歯科保存学会
多部田康一(たべた こういち)
1997年 新潟大学歯学部卒業
2001年 新潟大学歯学部附属病院 医員
2002年 The Scripps Research Institute Research fellow
2005年 新潟大学歯学部歯学科 助教
2007年 新潟大学超域研究機構 准教授
2011年 新潟大学研究推進機構超域学術院 准教授
2016年 UT Southwestern Medical Center Visiting Assistant Prof.
2016年 新潟大学研究推進機構 研究准教授
2018年 新潟大学大学院 歯周診断・再建学分野 教授
現在に至る
日本歯科保存学会、日本再生医療学会、国際歯科研究学会、日本歯周病学会
土岡弘明(つちおか ひろあき)
1997年 東京医科歯科大学歯学部卒業
1997年 東京医科歯科大学歯学部 歯科保存学第2講座(現歯周病学分野)入局
2005年 千葉県市川市にて土岡歯科医院開業
2019年 東京医科歯科大学歯学部臨床教授(歯周病学分野)
現在に至る
日本歯周病学会、日本臨床歯周病学会、米国歯周病学会、日本口腔インプラント学会、日本矯正歯科学会
本のエッセンスは、書籍の「はじめに」や「刊行に寄せて」に詰まっています。
この連載では、編集委員や著者が伝えたいことを端的にお届けするべく、おすすめ本の「はじめに」や「刊行に寄せて」、「もくじ」をご紹介します。
今回は、『歯周病の新分類対応 アップデート・ザ・ペリオ』です。