Q&A 歯科一般 ホワイトニング後のCR充塡はいつ行うべきか|デンタルダイヤモンド 2024年8月号

Q&A ホワイトニング後のCR充塡はいつ行うべきか|デンタルダイヤモンド 2024年8月号

学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2024年8月号より「ホワイトニング後のCR充塡はいつ行うべきか」についてです。

歯のホワイトニングがコンポジットレジンの接着を阻害すると聞きましたが、本当でしょうか。 神奈川県・T歯科

 ホワイトニング直後、歯質とコンポジットレジンの接着性は低下します。
 歯のホワイトニングは生活歯に対するホームホワイトニング、オフィスホワイトニング、失活歯に対するウォーキングブリーチに分類されますが、すべて過酸化物を主成分とする薬剤を使用します。過酸化水素(HO)は不安定な物質であり、容易に水(HO)と酸素(O)に分解されます。その過程でフリーラジカルを生成します。そのフリーラジカルが、歯の着色や変色の原因となる高分子の有色物質を分解し、透明な分子にするのがホワイトニングのメカニズムです。
 このホワイトニング材の分解によって発生するフリーラジカルや酸素が、コンポジットレジンの重合を阻害するため、機械的性質が低下し、歯質とコンポジットレジンの接着性が低下すると考えられています1)。2024年5月現在、厚生労働省の認可を受けて市販されているホームホワイトニング材は10%、16%の過酸化尿素、6%過酸化水素、オフィスホワイトニング材は約3.5~35%の過酸化水素が用いられています。製品によって濃度や組成、pHはさまざまですが、濃度が高くなるほど、歯質とコンポジットレジンの接着性は低下すると報告されています2)
 では、ホワイトニング直後からホワイトニング材の影響がどれくらいの時間続くのか、コンポジットレジン修復を行うタイミングはいつがよいかについては、多くの研究においてホワイトニング後、約1~2週間以上経過してから行うのが望ましいとされています3)
 しかし、ホワイトニング後のコンポジットレジン修復については、コンポジットレジンと歯質の接着性の他にも、ホワイトニング後の色調の安定性を考慮しなくてはなりません。ホワイトニング直後は、歯面が粗造になり、光の乱反射によって実際の色調がわかりづらく、正しいシェードテイキングが難しくなります。また、ホワイトニング直後が歯の明度が最も高く、徐々に低下し、約2週間経つと色調が安定するといわれています。そのため、色調の安定を待ってからの修復がよいでしょう。
 以上のことから、ホワイトニング後のコンポジットレジン修復は、歯質とコンポジットレジンの接着性やホワイトニング後の色調の安定性を考慮し、約2週間ほど空けて行う必要があると考えます。

【参考文献】

1) Titley KC, et al.: Adhesion of composite resin to bleached and unbleached bovine enamel. J Dent Res, 67(12): 1523-1528, 1998.
2) Barcellos DC, et al.: Effect of carbamide peroxide bleaching gel concentration on the bond strength of dental substrates and resin composite. Oper Dent, 35(4): 463-469, 2010.
3) Shinohara MS, et al.: Shear bond strength evaluation of composite resin on enamel and dentin after nonvital bleaching. J Esthet Restor Dent, 17(1): 22-29, 2005.

小林幹宏
昭和大学歯学部 歯科保存学講座 保存修復学部門


デンタルダイヤモンド 2024年8月号 表紙

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