全身麻酔下に、腫瘤の基部の有茎部分をメスで切離し、一塊として摘出した。圧迫のみで止血可能であったため、縫合は行わなかった。
処置と経過
一層の粘膜に覆われた骨様硬の腫瘤で、内部に直径10㎜の黄白色、平滑な骨様硬固物を認めた(図❸)。
組織学所見
重層扁平上皮下に、層板構造およびハバース管を有する成熟骨組織を認めた(図❹)。
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分離腫は組織奇形の一型で、個体発生の途中で組織の一部が何らかの原因で分離し、正常の連続性を失って他の組織内に入り込んで増殖し、腫瘍状の結節を形成したものである。口腔内には稀に骨性分離腫や軟骨性分離種が見られる。
口腔の骨性分離腫は舌後方1/3、とくに正中の舌盲孔付近に好発する。成因としては、盲孔付近に残った舌鰓弓遺残間葉細胞の骨化とする説が有力だが、甲状腺組織の一部が盲孔付近に遺残したものとする説、外傷後の血腫が骨化したものとする説などがあり決定的ではない。盲孔付近に腫瘤形成した場合、鑑別診断として最も重要なものは異所性の甲状腺で、MRIではT1、T2ともに周囲の筋肉よりも高信号を呈する。念のため、切除前に超音波検査で正常甲状腺が存在することを確認しておくべきである。
骨性分離腫の治療法は全切除で、手術後の再発は稀であり、予後良好の疾患である。

図❸ 摘出した腫瘤と黄白色の割面

図❹ 病理組織写真。重層扁平上皮下に、 層板構造およびハバース管を有する成熟骨組織を認める
2.骨性分離腫