Q&A 小児 「卒乳」の相談への適切な対応は?|デンタルダイヤモンド 2026年1月号

Q&A 小児 「卒乳」の相談への適切な対応は?|デンタルダイヤモンド 2026年1月号

学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊デンタルダイヤモンド 2026年1月号より「「卒乳」の相談への適切な対応は?」についてです。

2〜3歳になっても卒乳しない子について、保護者から相談を受けることがあります。歯科医師としてどのようにアドバイスするのが適切でしょうか。 香川県・R歯科

1.卒乳の時期に関する基本的な考え方
 かつては「断乳」という言葉が使われていましたが、現在は使われなくなりました。その経緯は、粉ミルクの台頭により世界的に母乳率が低下したことに端を発します。1989年、WHOとunicefが共同で発表した、「母乳育児成功のための10ヵ条」において、「母乳育児は保護・推進されなければならない」ことが示されました。以後、世界的に母乳育児の価値や支援の姿勢が見直され、「子ども主導の乳離れ=自然卒乳」という考え方が広まり、「卒乳」という用語が学会誌や育児雑誌でも使われるようになったことで、母子健康手帳からも「断乳」の用語はなくなりました。
 WHOはイノチェンティ宣言において「生後6ヵ月までは母乳のみ、その後も補完食と併用しながら2歳以上まで母乳育児を続ける」ことを推奨しています。また、『授乳・離乳の支援ガイド』1)(厚生労働省)でも「母乳やミルクは子どもの欲求や発達状況に応じて与える」とし、母乳の終了時期は母親と子どもの状況を尊重することを推奨しており、日本小児科学会も同様の立場をとっています。
 卒乳に関しては専門家によって立場が異なり、「1歳前後で断乳(母親主導でやめる)」という考えや、「子どもがほしがらなくなるまで続ける自然卒乳」を支持する立場もあり、母親が混乱することも多いです。
 生後1歳以上で母乳を継続するか否かを悩む理由に、う蝕の心配や次子の妊娠・または妊娠の希望、栄養不足の不安、依存心や自我の芽生えなどの子どもの心理的発達に関する心配などが挙げられますが、科学的には、母乳の長期継続に大きな害はなく、母親と子どもの状況や希望を尊重することが大切とされています。このような母親が抱える心配事に関しては、以下のようにアドバイスをするとよいと思います。
2.母親に対するアドバイス
1)う蝕の心配
 母乳に含まれる糖質は乳糖なので、それだけではう蝕にはならないのですが、固形食が始まり、ショ糖(砂糖)と一緒に摂取すると、う蝕になりやすくなります。う蝕は母親からの細菌感染や甘いものの摂取習慣が要因なので、母乳う蝕の予防には母親の口腔環境改善や甘味制限、歯磨き、フッ化物利用などが有効です。
 乳幼児の歯磨きに困難を感じる親はとても多いので、乳歯が生え始めたら、プラーク除去の定期受診を勧めるのも有効です。筆者は歯が生える前からの小児歯科受診を妊婦に推奨しています。
2)次子の妊娠・妊娠希望
 授乳中でも妊娠は可能ですが、授乳に排卵抑制作用があり、妊娠しにくくなる場合があることを説明します。妊娠を望む場合には、授乳回数を減らして授乳を継続しながら妊娠を待つか、断乳するか、母親の選択を尊重しつつ相談します。
3)栄養不足の不安
 先行研究で1歳を過ぎても母乳の栄養価は変わらないと証明されています。離乳期に適切な補完食を与えていれば、栄養不足になることはありません。食が細いことを、母乳のせいにされることもありますが、母乳をやめてもよく食べるようになるとは限りません。
4)母親から離れられない心配
 幼児が母親に依存するのは正常な発達過程です。授乳を急にやめることで、逆に後追いが強くなることもあります。母乳は、新しい経験に船出していく子どもにとっての寄港地。外の世界で出会った不安や緊張を和らげられる安心感が、自立の基盤になります。
5)幼児の自我の芽生えとの誤解
 1歳半を過ぎ、いわゆる“Terrible Two”(恐ろしき2歳児)といわれる時期を迎えると、自我の芽生えから自己主張が強くなります。
 一見、反抗的に見えるこの変化が長期授乳のせいにされることがありますが、授乳が気持ちを落ち着かせ、子育てを楽にする助けとなることも多いので、この変化は成長の証と理解し、安心して授乳を続けてください。時期がくれば子どもは自ら乳離れしていきます。子の成長と自立を信じ、母子の気持ちを尊重した気長な視点でかかわることが肝心です。

【参考文献】

1) 厚生労働省:授乳・離乳の支援ガイド(2019改訂版).
https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/0004960257.pdf(2025年11月21日最終アクセス)
2)NPO法人 日本ラクテーション・コンサルタント協会:母乳育児支援スタンダード 第3版. 医学書院,東京:299-304,2025.

松原まなみ
朝日大学保健医療学部 看護学科


デンタルダイヤモンド 2026年1月号 表紙

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