刊行にあたって:歯科医院デザインソリューション デザインのチカラで医院の課題を解決する経営戦略|本のエッセンス

刊行にあたって:歯科医院デザインソリューション デザインのチカラで医院の課題を解決する経営戦略|本のエッセンス

本のエッセンスは、書籍の「はじめに」や「刊行にあたって」に詰まっています。
この連載では、編集委員や著者が伝えたいことを端的にお届けするべく、おすすめ本の「はじめに」や「刊行にあたって」、「もくじ」をご紹介します。
今回は、歯科医院デザインソリューション デザインのチカラで医院の課題を解決する経営戦略です。

ゼネラルデンタルカタログ

刊行にあたって

デザインは課題を解決するチカラをもっている

 「デザインは課題解決である」
 この言葉を耳にしたことのある方は少なくないだろう。多くの賢人が同様の考えを述べてきた。たとえば、20世紀を代表するフィンランドの建築家アルヴァ・アアルトは「デザインは人間のための問題解決だ」と語っている。
 この言葉が意味するものは、デザインを単なる“見た目の美しさ”を整える行為として捉えるのではなく、深層に潜む課題を見つけ出し、それにふさわしい解をカタチにする営みとして捉えることにほかならない。
 ある歯科医院で「面接に来た求職者の採用決定率が低い」という課題があったとする。背景を丁寧に読み解くと、求人情報に記載の待遇は他院より好条件であるにもかかわらず、求職者にとって院内の環境が魅力的に映っていないことがわかった。
 そこで、診察室と滅菌コーナーの改装を実施し、スタッフが安心して診療に臨める環境を整えた。清潔で明るい診療空間はスタッフのモチベーションを向上させ、同時に求職者は「この歯科医院で働きたい」と魅力的に感じるようになり、採用決定率が上昇した。
 このように、目に見えるモノを美しく整えるだけでなく、目に見えない「不安」や「心理的なハードル」といった課題の解消こそが、デザインの本質的な意味といえる。
 「真の課題を見つけ出し、デザインのチカラによって解決へと導く」
 これこそが、本書の主題となる「デザインソリューション」である。
 私はこれまで20年以上にわたり、歯科医院の空間デザインに携わってきた。手がけたデザインは、1つとして同じものが存在しない。それぞれに異なる悩み、想い、そしてストーリーがある。表面的には似たような課題に見えても、クライアントが抱く理想や価値観、医院の理念によって、最適な解決策は異なる。つまり、空間デザインのあり方も大きく変わってくる。だからこそ、私たちが手がけてきた歯科医院は、唯一無二の個性をもつ空間となっている。
 本書は、これまでにご縁をいただいた歯科医師の方々のリアルな想いに向き合い、カタチにしてきた経験を通して得た「気づき」を言語化し、さらに時代背景を踏まえたものになっている。本書が「未来の歯科医院づくり」に役立つヒントとなり、読者の皆様の勇気に繫がることを心から願っている。

スタイル・エイチ・デザインワークス 代表
雨谷祐之

CONTENTS


スタイル・エイチ・デザインワークス 代表 雨谷祐之

Profile

雨谷祐之(あまがい ひろゆき)
株式会社スタイル・エイチ・デザインワークス
代表取締役/デザイナー

1971年茨城県生まれ。幼少期より無から有を生み出すモノづくりに魅了され、建築の道へ進む。建築設計事務所で教育文化施設や医療福祉施設の設計監理を通して、建築設計実務の基礎を学ぶ。
2003年にスタイル・エイチ・デザインワークスを設立し、間もなく開業前の荒井昌海先生と出会い、エムズ歯科クリニック東中野の内装デザインを手がける。この出会いを機に歯科医院デザインの探求が始まった。
2015年には日本歯科新聞社主催「歯科医院デザインアワード」にて編集長賞を受賞。
2019年に著書『歯科医院改装メソッド』を執筆し「持続可能な歯科医院」という独自メソッドを提唱、2020年には『歯科医院開業バイブル』の執筆に参加した。
2021年の「日本デンタルショー」では「スタッフみんなで考える魅力的な医院デザイン」と題して「共創」による医院づくりを提唱するなど、セミナーや講演を通じた情報発信にも力を注いでいる。
2024年より「月刊デンタルダイヤモンド」誌にて「クリニック改装のデザインソリューション」を連載し、18ヵ月にわたり事例を紹介した。
現在も「create your style」をコンセプトに、クライアントの想いをカタチにする医院づくりを実践し、機能性とデザイン性を兼ね備えた空間で歯科医師の未来創造を支えている。


スタイル・エイチ・デザインワークス 代表 雨谷祐之