本のエッセンス|刊行にあたって:パーシャルデンチャーの“LEVEL UP”トレーニング

本のエッセンスは、書籍の「はじめに」や「刊行に寄せて」に詰まっています。
この連載では、編集委員や著者が伝えたいことを端的にお届けするべく、おすすめ本の「はじめに」や「刊行に寄せて」、「もくじ」をご紹介します。
今回は、デンタルダイヤモンド増刊号『パーシャルデンチャーの“LEVEL UP”トレーニング』です。

刊行にあたって

 パーシャルデンチャーの設計は、支持、把持、維持をベースに考えられ、その考え方は100年前より大きく変わってはいない。
 そして、かつてはパーシャルデンチャーは歯を壊すのか、それとも守るのかが議論され、残存歯にとって悪であるとの考えも拡がり、部分欠損症例におけるパーシャルデンチャーは、すべてインプラント補綴に置き換わるであろうとの予想もされてきた。
 ところが、現代もパーシャルデンチャーはなくなっていない。そればかりか、日本においては高齢者が増えており、部分欠損症例にパーシャルデンチャーを製作する機会が増えてきている。
 超高齢社会の日本において、今後も高齢者数は増える一方で、無歯顎者率は減少すると予想されている。高齢者の元気の源は「自分の歯で嚙めること」であり、歯を残せるようになったことは、歯科医師としてもたいへん喜ばしいことである。しかし、歯があることで、部分欠損の患者では残存歯を支点に義歯が回転して嚙みにくくなった結果、難症例になることもある。
 高齢者は今後ますます増加し、その口腔内は部分欠損の期間が長く続く時代となってゆく。われわれ歯科医師は、その欠損補綴装置であるパーシャルデンチャーの質を上げることを考えていかなければならない。
 このような時代背景の変化を踏まえて、新しい時代に対応したパーシャルデンチャーへの考え方が必要である。そのためにも、パーシャルデンチャーは機能回復ばかりではなく、残存歯を守り、長持ちすることが求められる。これからは義歯の動きを少なくするための設計や工夫、歯周環境の整備について、さらに追究しなければならないであろう。
 本書では、パーシャルデンチャーに関連した分野において著名な先生方にご協力いただき、パーシャルデンチャーにおける臨床の質が“LEVEL UP”するポイントを論じていただいた。

2022 年9月
亀田行雄
前畑 香

CONTENTS

https://www.dental-diamond.co.jp/item/1089

編集委員略歴

亀田行雄(かめだ ゆきお)
1988年 東北大学歯学部卒業
1991年~2002年 東京医科歯科大学高齢者歯科学講座
1994年 埼玉県川口市にて、かめだ歯科医院開設
2014年 医療法人D&H かめだ歯科医院、樹モール歯科開設
現在に至る

有床義歯学会(JPDA)会長・指導医
日本顎咬合学会 評議員
日本臨床歯周療法集談会(JCPG)副会長
テントウ虫スタディグループ 会長、TMSIコース 主宰

前畑 香(まえはた かおり)
2000年 神奈川歯科大学歯学部卒業
2006年 なかえ歯科クリニック院長
2022年 神奈川歯科大学(歯学博士)
現在に至る

神奈川歯科大学総合歯科学講座 顎咬合機能回復学分野 特任講師
有床義歯学会(JPDA)理事・指導医
日本補綴歯科学会 専門医
日本顎咬合学会 認定医
日本デジタル歯科学会 会員
日本老年歯科医学会 会員

執筆者一覧

星 憲幸・林 大悟・和田淳一郎・松田 謙一・飯田 雄太・前畑 香・長阪 信昌・鈴木 宏樹・宮本 績輔・小西 浩介・一色ゆかり・佐藤 幸司・谷田部 優・亀田 行雄・松下 寛・寺本 浩平・齋藤 善広・松本 勝利・荻野洋一郎・二川 浩樹・藤本 卓・遠藤 義樹・関野 愉・田地 豪