Dd診断力てすと『歯肉の色調異常』デンタルダイヤモンド 2017年8月号

内藤慶子 Keiko NAITOU
蓜島桂子 Keiko HAISHIMA
浜松医療センター 口腔顎顔面センター 歯科口腔外科
〒432-8580 静岡県浜松市中区富塚町328


図❶ 右鼻翼基部を中心に軽度腫脹、色調変化は認めない

図❷a 下唇に粘膜炎ならびに上顎右側唇頬側歯肉に暗紫色変化

図❷b 硬口蓋右側の粘膜が暗紫色に変化、粘膜表層では血流不良が疑われる

図❸ 骨髄移植4週間前の副鼻腔CT。右上顎洞内にあきらかな異常は認めない


患者:47歳、女性性
主訴:歯肉の変色
家族歴:特記事項なし
既往歴:急性骨髄性白血病
現病歴:治療抵抗性・再発高リスクの急性骨髄性白血病に対し、地固め療法を行うとともに骨髄移植の準備が進められ、周術期口腔機能管理として歯科介入も行われていた。地固め療法3コースまで実施して、再発、非寛解の状態で、非血縁者間同種骨髄移植が計画された。骨髄移植2日前に、上顎前歯部歯肉の色調異常に気づいた。なお、地固め療法中に、口腔粘膜炎やその他粘膜異常、頬部の異常は認めなかった。
現症
全身所見:軽度浮腫あり。PIPC/TAZ(タゾバクタムナトリウム・ピペラシリンナトリウム)、DAP(ダプトマイシン)、MCFG(ミカファンギンナトリウム)を投与中。
口腔外所見:右鼻翼基部を中心に軽度腫脹があり、圧痛を伴っていた。発赤などの色調変化は認めなかった(図❶)。
口腔内所見:上唇に軽度浮腫、下唇粘膜炎あり。上顎右側唇頬歯肉と硬口蓋右側の粘膜が暗紫色に変化し、口蓋粘膜の表層では血流不良が疑われた(図❷a、b)。
臨床検査所見
血液検査結果:骨髄移植2日前、WBC 0/μL、RBC 31,600/μL、Hb 9.8g/dL、Plt 49,000/μL。
血液検査結果:骨髄移植4週前、β-Dグルカン ≦5.0、アスペルギルス 0.0、カンジダマンナンAg <0.02。
画像所見: 骨髄移植4週間前の副鼻腔CTにて、左上顎洞に軽度の粘膜肥厚を認めたが、右上顎洞内にあきらかな異常は認めなかった(図❸)。

Q 最も疑われる疾患名は?

① ムーコル症(ムコール症・接合菌症)
急性骨髄性白血病の紫血小板減少に伴う出血
③ アスペルギルス症