嚢胞形成の腫瘍 | 腹部大動脈瘤 |
図1 |
◆◆◆ | 腹部大動脈瘤の発見と経過 | ◆◆◆ |
当科外来での血液検査では、血小板が7万と少ないのが気になるが、その他に異常所見はない。血小板減少について内科主治医に問い合わせをしたところ、その先生が診はじめて以来2年間ずっと少ないということで、近時にITP(特発性血小板減少性紫斑病)に罹患したのではないことがわかった。血液化学にはとくに異常はなかった。
血小板の7万が気になって血液内科に受診依頼をしようかと考慮していたが、オーベンの佐々木、金子先生は、「全身麻酔で短時間での開窓をしよう」というので、手術申込書を提出した。研修医の森君が病室へアナムネをとりにいって、「山崎先生、腹部に大きな腫瘤があります。拍動を触れます。大動脈瘤ではないでしょうか」という。森君の言うとおりの状況であるが、患者さんは自覚していなかった。
腹部のCTは図2のとおりで、大きな大動脈瘤があり、心血管外科に依頼した。破裂する危険があるので至急手術をしますとの返事。この説明に、患者さんは立派な人物で、「重要な病気をみつけていただき、ありがとうございました」と礼を言われた。小出教授の執刀で人工血管置換の大手術が行われた。術後の経過はきわめてよく、1ヵ月後には口腔外科の病棟に転棟し、顎骨の腫瘍の手術をした。病理診断は歯原性嚢胞であった。
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患者さんは腹部大動脈瘤の術後も、顎骨腫瘍の術後もともに経過はよく、術後8ヵ月の現在は1ヵ月に1回の定期診査に元気で通院している。紹介医の金子先生とは現在でも連絡をとりあっている。