顔色が悪く顎が腫れている | 悪性リンパ腫 |
◆◆◆ | 患者さんの症状と事情 | ◆◆◆ |
拝見すると上記の紹介状のとおり。顔は左の下顎の腫脹とリンパの腫脹があり、左のオトガイ神経の麻痺がある。同道してきた雇用主である同国人の社長は日本語が達者。「悪性の腫瘍だと思いますから、顔と胸のレントゲンをとりましょう」というと、社長は「保険証がないし、お金もないので1枚だけにしてね」。そこで1枚写したパントモグラフを示した。上顎も下顎も骨が吸収しているのをみていただきたい(図1)。
社長に佐々木先生が説明している。
「悪性腫瘍に間違いありませんが、顔だけでなく全身にもひろがっていると思います。顔色が真っ白ですから、人の命を予想してはいけないのですが、このまま放っておくと1〜2ヵ月ではないでしょうか?
お金の問題があるといって、血液検査は受けずに帰宅。
1週間後、社長が現われて、「故国へ帰すことにしたので、領事館に出す診断書をください。もう助からないと書いてください」という。「レントゲン1枚だけで役所に出す診断書は書けないから、一度本人をつれてきて血液検査をしましょう。2時間待っている間に結果が出ます」と説明。
それから5日後に本人が来院した。ただちに採血とバイオプシーをして、2時間以内に結果が判明した血液検査に基づいて診断書を記した。
検査結果のおもなものは、
赤血球数 | 155万 | (410〜530万) |
ヘモグロビン | 4.7g/dl | (13.5〜17.5) |
ヘマトクリット | 14.3% | (40〜48) |
尿素窒素 | 118mg/dl | (8.7〜20.6) |
クレアチニン | 7.6mg/dl | (0.7〜1.1) |
アルブミン | 2.6g/dl | (4.3〜5.0) |
腫瘍にともなう極度の貧血がある。すでに他臓器不全をきたしているようで腎不全になっているようである。他臓器への転移は調べていない。後日判明した病理診断は悪性リンパ腫で当初の予想どおりであった。
◆◆◆ | 顛末は? | ◆◆◆ |
患者さんの故国の大学病院に診療情報提供書を持たせたが、受診しなかったのか返事はきていない。
◆◆◆ | リンパ腫は歯科を 初診することが多い |
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図1 |