左上顎歯肉のしびれ | 中枢神経疾患 |
◆◆◆ | 患者さんの病歴 | ◆◆◆ |
当日、東海大学病院口腔外科を受診し、佐々木が担当となった。紹介状のとおりで、左側の三叉神経第2枝、とくに眼窩下神経のしびれが強い。29歳という若さではあるが、上顎癌を否定する必要があるので、レントゲンを撮って、上顎癌がないことをみてから、脳神経外科のS先生に診察を依頼した。患者さんを私に紹介してくださったK歯科医師と同様に、「私には診断できません」と付記した。
脳神経外科で、CTとMRIを撮っているうちにも、神経麻痺は三叉神経の全域に広がって、脳神経外科に入院した。
◆◆◆ | その後の経過 | ◆◆◆ |
神経内科では副腎皮質のステロイド剤のプレドニゾロン・1日60mg(5mg錠を12錠)の投与をはじめ、めまいに対してはメリスロンを、頭痛に対してはテルネリンなどの投与が開始された。1ヵ月間の薬物療法で病変の進行は止まり、その後は次第に改善してきた。加療開始2ヵ月でめまいは改善し、プレドニゾロンの減量が始まった。眼の症状は改善していないものの、四肢の筋力低下は改善し、病院の廊下を歩行できるようになった。入院後80日では、眼の症状も改善のきざしがあり、プレドニゾロンも1日量10mgまで減量できた。
◆◆◆ | 退院と社会復帰 | ◆◆◆ |
退院後1年にして、介護なしで家庭生活が送れるようになった。
◆◆◆ | この疾患について | ◆◆◆ |
今回は、神奈川県伊勢原市に開業しているK歯科医師が、異変に気づいてすみやかに大学病院に紹介してくださったことが奇跡的な回復につながった。