グレープフルーツ | ![]() |
降圧剤の効きすぎ |
◆◆◆ | 私の失敗談 | ◆◆◆ |
昨年、新潟県へ山登りに行った。前日は麓の民宿に泊り、朝5時に朝食をいただき、そのまま山に登り始めた。午前9時頃になってアダラート®を服み忘れていることに気がついた。いつもは起床時の6時頃に服用しているアダラートCR20®を歩きながら服み込んだ。すぐに休憩となり、大好きなグレープフルーツを2分の1個食べた。ふたたび歩き始め、30分ほど経った頃に気分が悪くなり、休んだり歩いたりの繰り返しとなった。早い話が、グレープフルーツを同時に食べたのでCa拮抗性降圧剤が効きすぎて血圧が下がりすぎたのであろう。
この事件以来、私はグレープフルーツは嫌いだといって食べないことにしているが、残念なことである。このことを山崎に話したところ、「佐々木先生は臨床薬理学の大家だと自称していますが、Ca拮抗性降圧剤とグレープフルーツの相互作用を知りながら、自分で失敗するとは情けないですね」と言われ、返す言葉がなかった。数日後、山崎が文献をたくさん持ってきて、この失敗談を『デンタルダイヤモンド』に書いてくださいと言う。
◆◆◆ | 文献からの知識 | ◆◆◆ |
グレープフルーツでは、不整脈の治療剤のプロパフェノンとキニジン(表2)、黄体ホルモンと卵胞ホルモンのエストラジオール(表3)、高脂血症の治療薬であるシンバスタチン(表4)、睡眠導入剤のトリアゾラム(表5)の作用増強がいわれている。
【参考文献】
1)東 修一、大野雅子:グレープフルーツジュースの薬剤干渉、綜合臨床、48:1456〜1459, 1999.
2)Biley et al.:Grapefruit juice-drug inter-action,Br.J.Clin.Pharmacol.46:101〜110,1998.
表1 Ca拮抗性降圧剤としてテストされ、降圧作用が増強されるもの ニフェジピン、ニカルジピン、ベラパミル、ニトレンジピン、ニソルジピン、フェロジピン |
(Ca拮抗性降圧剤については本誌10月号に詳細に記したが、連載を毎月読んでくださる読者は少ないであろう。テレビやラジオで気象予報士が、「今日の最高気温は昨日より6度低くなるでしょう」などということがあるが、昨日は出張でいなかったし、駅からタクシーに乗ったので、寒かったか、暖かな晩秋だったかわからない。役に立たない情報をいう予報士がいる。本誌の前月号を参照などと記すのは、役立たずの気象予報士と同じである。Ca拮抗性降圧剤は市販の医薬品として120の商品があり、グレープフルーツとの相互作用が記載されていない薬剤は2種類のみである |
表2 不整脈の治療薬の作用増強 |
プロパフェノン:ソビラール® キニジン:硫酸キニジン® |
表3 卵胞ホルモンの一部と黄体ホルモンの一部の作用増強 |
エストラジオール:エストラダームTTS® |
表4 高脂血症と高コレステロール血症の治療薬 シンバスタチン:リポバス®は作用増強あり |
高脂血症の治療薬の世界のベストセラーであるメバロチン®は、グレープフルーツとの相互作用はないというリーフレットが発売元の三共(株)から出ている |
表5 トリアゾラム triazolam (ベンゾジアゼピン系睡眠導入剤の作用増強) |
アサシオン®、アスコマーナ®、カムリトン®、トリアゾラム®、トリアラム®、ネスゲン®、ハルシオン®、ハルラック®、パルレオン®、フロサイン®、ミンザイン®、ライトコール® |