パーキンソン病 | ![]() |
口腔ジスキネジア |
◆◆◆ | パーキンソン病と 口腔ジスキネジア |
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「いつも嫁に軟らかいものを作ってもらっています。でも、嫁が入院したら、顎がガクガクするので、何も食べられなくなって死んでしまいます」
「いや、あなたは血色もいいし、しばらく食べなくても大丈夫ですね。宇宙飛行士が食事の代わりに飲んでいる缶詰をもたせましょう」
このような説明に、患者さんはかなり納得してくれた。「お嫁さんが入院されている間は、宇宙飛行士のように鼻からチューブを入れて流動食を採る方法もありますよ」という私の説明に、本人もお嫁さんも大笑いされた。「嫁の入院は1週間程度です。その間はスーパーで売っている袋入りのお粥でも大丈夫とわかり自信がつきました。先生ありがとうございました」と、患者さんもお嫁さんも笑顔で帰られた。これで診察は終了。請求できるのは初診料だけであった。
今月の主題は患者さんが服用している6剤のことである。
お嫁さんの説明によると、
「姑はパーキンソン病で体を震わせるようになったのが8年前。治療を受けるためにあちこちの病院に行きました。投薬により、身体を震わせるのと歩行の際にトントンと勝手に歩くようなことは改善しました。ところが1日中、口の周りをモグモグさせるようになり、すっかり不機嫌になりました。主治医にはもちろんそのことは申し上げました。主治医はパーキンソン病の治療が優先するからといって取り合ってくださいませんでした。姑はますます不機嫌になり、鬱病となりました。早く死にたいとばかり言いました。それが5年前、いま治療をしてくださっている神経内科の先生を紹介していただき、通院するようになりました。パーキンソン症状だけではなく、口の周りをモグモグさせるのも少なくなりました。口腔ジスキネジアというもので、抗パーキンソン病薬で現われることがあることをいまの主治医から説明していただきました。姑はふたたびすっかり陽気になり、嫁の私も嬉しいです」
お嫁さんの説明は理路整然としたものであり、感服した。
パーキンソン症状は治療が難しいものであろう。口腔ジスキネジアのすべてが抗パーキンソン病薬で発症しているなどとは言う訳がない。むしろ筆者は、パーキンソン症状が改善するなら口腔ジスキネジアは仕方ないのかなあと思っていた。訳のわかっていない内科医などは、「口腔ジスキネジアを義歯を入れて治してください」などという依頼状を出すらしい。
![]() 図1 実際の処方箋 |
処方箋の略字 MA:MorgenとAbend(朝と夕) naE:nach dem Essen(食後) vds:vol dem Schlafengehen(就寝前) |

抜歯は酸素濃度が93%なので、湿性酸素(気管支喘息では水を通した酸素を用いる)を2リットル流し、酸素濃度が98%になったところで、局所麻酔で行った。鎮痛剤については患者さんは知識がないので、プラセボ(偽薬)を投与した。
ニトログリセリンはご存知のとおりの強心剤。ニトロダームTTS


パナルジン

グリミクロン

塩酸アミトリプチン amitriptyline hydrochloride 三環系抗うつ剤
ベンゾジアゼピン系精神神経用剤
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ハロペリドール haloperidol ブチロフェノン系精神安定剤
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エチゾラム etizolam チエノジアゼピン系精神安定剤
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センナという植物は知らないが、その抽出物が便秘に効くことは知られている。