脈が遅い | 心臓のペースメーカーへ |
当院を受診した患者さんは、図1の診療情報提供書のとおりで、63歳、自営業の男性。主訴は7perと8埋伏歯に起因したらしい右顎下リンパの違和感。歯肉の炎症は抗菌薬の投与で緩解し、リンパ節の違和感も消失した。パントモグラフをみると、とも要抜去であった。自院で抜歯しようと思ったが、右の手首で脈を触れるといかにも遅い。左の手首でも脈をみたが、同じように遅い。他科での加療や投薬はない。2年前に左胸痛があったので近くの内科を受診して検査を受けたが、たいしたことはないといわれ、その後は胸痛もなく普通に生活しているとのこと。
自院にパルスオキシメーターがあるので、プローブを指につけてみたところ、脈拍は41〜51回と遅く、サチュレーションは99%と正常であった。血圧は120/80mmHgくらいで、高血圧はない。その後2回、来院のたびに脈拍を測定したが、40〜60回と遅い。
東海大学病院口腔外科の山崎臨床助手に相談したところ、「心循環器内科に依頼したほうがよいでしょう」という助言をいただいた。図1に示すとおりの診療依頼をした。
◆◆◆ | 心循環器内科からの返事とその後 | ◆◆◆ |
私としては、ペースメーカーを入れてもらってから安心して抜歯をしたいと思ったが、内科主治医は、徐脈に伴う不整脈がないので緊急性がないこと、ペースメーカーは高額なので、精査したうえで患者さんの承諾をもらう必要があり、3ヵ月も先になるとの意見であった。
検査のための入院中に、循環器内科の管理のもとに筆者(大塚)が東海大学病院に行っての抜歯をした。抜歯中の脈拍数も42〜50回であったが、内科医がついていてくださったうえ、何事もなく終わった。
徐脈に対しては、硫酸アトロピンの皮下注で対応する程度の知識はあるものの、かつ自院の救急セットにあるものの、実際に使用したことはなく、私にとって貴重な経験となった。患者さんは抜歯と検査後に退院し、ペースメーカーを入れるかどうかを相談中であるとのことである。
図1診療情報提供書 |
◆◆◆ | 佐々木からのコメント | ◆◆◆ |
◆◆◆ | 大塚からのコメント | ◆◆◆ |
◆◆◆ | デマンド型のペースメーカー | ◆◆◆ |
◆◆◆ | 歯科でのマイクロモーターと 電気メス |
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図2心臓のペースメーカーが盗難防止門で誤作動と伝える新聞記事 (1998年11月13日付「朝日新聞」) |