エックス線フィルム センサー |
エックス線ディジタル センサー |
千葉県・開業 | 千葉県・開業 | |
勝見行雄 | + | 中久木一乘 |
昨年10月に筆者は、アメリカのワシントンD.C.で行われたアメリカ歯科医師会(ADA)の大会に参加した。その時に同時に開催されていたデンタルショーで他のブースよりも比較的大きく展示していたメーカーの一つにShick Technologistがあった。この会社を知っている人も多くなってきたと思うが、今回のテーマであるディジタルエックス線イメージングシステムを開発、販売している。一昨年のオーランドで行われたADAの大会にもブースを構えていたが、その時よりも一回り大きな規模で行われているように思われた。アメリカにおいて普及している口腔内用CCDカメラほどではないが、ディジタルエックス線に興味を持っている先生方が増えてきていることを実感させられた。
近年日本においても、輸入品だけでなく国産品も開発されるようになってきており、またデンタルサイズだけでなくパノラマ撮影にも対応できる製品も発売される、というわけで、昨年は口腔内用のCCDカメラが売れたこともあり(2,000台以上販売したメーカーもあるとのこと)、口腔内画像のディジタル化の年といえよう。それに対して、相当希望的観測が含まれているが、今年はエックス線画像のディジタル化の年となりそうな予感がする。そこで、通常のフィルムで撮影したものに比べどのようなメリット、デメリットがあるのかを今回突き詰めていきたい。
通常のエックス線フィルムには、スクリーンタイプとノンスクリーンタイプがあるが、前者は増感紙を使用するタイプで、エックス線自体に対する感度よりも増感紙がエックス線によって発する光に感度が高いように作られている。歯科においてはセファロ撮影、パノラマ撮影に用いられる。後者は増感紙を用いないで使うタイプで、エックス線に対する感度が高いフィルムを使う。歯科においては、デンタル、オクルーザルなどに用いられている。
日本歯科放射線学会放射線防護委員会のガイドラインでノンスクリーンタイプには表1のなかのISO感度DとEを使うように書かれている。今まではスクリーンタイプに用いるC感度のフィルムを代用していたが、現在は95パーセント以上D感度以上のフィルムに移行している。Dよりも感度の高いE感度のフィルムのほうが照射線量も少なくすむが、エックス線写真の画質が低下する傾向になることや、現在においては一般的にD感度のフィルムが80パーセント以上市場を占めていることなどから阪神技研のD感度のフィルムを使用して撮影した。使用したエックス線装置は、朝日レントゲン工業の定格出力60kV、10mAサテライトDX(約5年間使用)である。
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エックス線ディジタルセンサーはCCD(Charge―Coupled Deviced)センサーを口腔内に挿入して撮影するタイプとIP(Imaging Plate)を利用したタイプに分けられる。前者は、CCD素子と呼ぶ半導体と増感紙の役割を果たす蛍光体(シンチレーター)からなり、その間に光ファイバーが介在する構造となっている。この構造上のためある程度の厚さが必要となってくる(5〜8mm)。なかには、シンチレーターを使わないものも存在する。そしてエックス線を受けたCCDセンサーからアナログの画像信号としてコンピュータに送り出され、ディジタル信号に変換され、ディスプレーに映し出されることになる。今回パナヘラウスデンタル株式会社の「PanaDigital」を使うことができた(図1)。撮影時非常に高感度であるため線量半分にカットするフィルターを使用し、そのうえ小児用の照射時間で撮影した。通常のエックス線フィルムの撮影の条件では、まったく画像を作ることはできず、既設のレントゲン設備ではそれなりの調整を必要とした。エックス線を照射してディスプレーに写し出されるまでの時間は、わずか2秒ぐらいであった。 |
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タイプ | CCD | CCD | CCD | CCD | CCD | IP | IP |
商品名 | Sens-A-Ray | COMPURAY | PanaDigital | CDR | Dixel | Digora | DenOptix |
メーカー | リーガム メディカルシ ステムズ社 |
トロフィー ラジオロジー 社 |
松下産業機器 | シックテクノ ロジーズ社 |
モリタ | オリオンコー ポレーション ゾルデックス 社 |
デンツプライ ジェンデック ス社 |
メーカー国 | スウェーデン | フランス | 日本 | アメリカ | 日本 | フィンランド | アメリカ |
販売 | タカラベルモ ンド |
ヨシダ | パナソニック ヘレウス デンタル |
デンタルオー ソペディック ス |
モリタ | モリタ | デンツプライ ジャパン |
センサ外形の 大きさ w×l×h (mm) |
22×41×8 | 24×40×8 | 28×36×6 | 19×27×5.5 23×41×5.5 29×43×5.5 |
25×38.5×7.5 | 26×35×1.6 35×45×1.6 |
31×41×0.8 22×35×0.8 |
画像領域の 大きさ |
17.3×25.9 | 18.1×27.5 | 18.2×24.3 | 14.7×20.9 19.2×34.6 25.2×36.5 |
19.0×29.0 | 21×40 30×40 |
31.0×41.0 22.0×35.0 |
画素数 | 221760 | 393216 | 326534 | 133110 288000 399000 |
240000 | 232960 121472 |
698457 435659 |
X線装置 | 既設装置可 | 専用もしくは 既設装置改造 |
既設装置可 | 既設装置可 | 既設装置可 | 既設装置可 | 既設装置可 |
撮影された画像を比較すると、やはりエックス線フィルムのほうが画質は上である。ディジタルエックス線のなかで比べると解像度で「PanaDigital」が優れていることになる。IPは読み取りレーザースポットの直径がまだCCDの1画素より大きいため、最大解像度においてはCCDのほうがやや有利である。有効画像面積の割合が高いのはエックス線フィルムと「DenOptix」のIPで、100%利用できるので撮りたい部位を確実にフレーム内に収められる。CCDタイプは外形に比べ、撮影に使える部分が一回り小さくなってしまう。また、撮影時のセンサーの位置決めは、フィルム、IPにおいてはとくに問題はなかった。しかしCCDは、厚さもありフィルムのように曲げることができないため、深く入れ込むと角が粘膜に当たってしまう。インジケーターを使うことによりある程度改善できた。また、CCDタイプの場合ラチチュードが狭いため、照射線量の調整が必要で、「PanaDigital」以外の機種でエックス線装置は専用のものしか使用できないものもある。照射線量は確かに相当減少することが可能であろう。被曝線量を90%以上軽減できるとうたっているものもある(図4〜7)。
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撮影してからディスプレーに映しだされるまでの時間は、フィルムの場合現像、定着、乾燥に3〜4分かかる。CCDタイプではわずか2秒、これは即時性を要求されるようなリーマー、ポイントの試適や術中のインプラント体の埋め込み位置の確認などには非常に便利であろう。できればユニットの側にエックス線装置を置けるようになれば、非常に便利なものとなるであろう。撮影した画像を用いて患者さんに説明するうえで、フィルムの場合はシャーカステンに貼り、通常はそのままの大きさで利用する。ディジタルエックス線ではパソコンに取り込まれているため、利用するソフトによっては拡大、回転、コントラストや明るさの補正、計測、口腔内カメラとの組み合わせなどいろいろ行え、充実した説明が行える。 |
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昨年のADAの大会でもシーメンス社やトロフィー社からパノラマサイズのCCDが発表されており、また今回使用したデンツプライジャパンのIPのようにパノラマ、オクルーザルに対応したものも出てきた。デンタルサイズだけでなく、臨床で扱うサイズすべてをディジタル化できれば現像機も不要になり、完全にフィルムレスになることが可能かもしれない。また、被曝線量も少なく患者にも喜ばれると思う。しかしこれらのシステムは高価なパソコン、入力機器など精密機器が常に必要であり、画像もバックアップを含め大きな容量の記憶装置が必要となってくる。これらは、確かに設備の整ったところでは十分に機能するかもしれないが、在宅医療など十分な準備ができないところや電気のないところでは不可能である。フィルムはそれ自体が電気のいらない高画質のディスプレーであり、センサーでもある。また、自動現像機を除けば初めにかかる費用はフィルム代と現像液代ぐらいである。このメリットは非常に大きい。しかし、均一な現像ができるように液の管理をすることや、廃液の処理、銀をはじめとする資源利用、環境対策などを考えるとディジタル化の流れを止めることは難しい。今後の日常臨床におけるエックス線画像診断にはCCDやIPタイプを使い、往診や緊急時にはエックス線フィルムをインスタント現像や手現像で対応するようになるのかもしれない。
1) | 日本歯科放射線学会放射線防護委員会:高感度フィルムを用いる口内法X線撮影に関するガイドライン、日本歯科医師会雑誌、48(1):4〜13、1997. |
2) | 黒柳錦也、他:CCDセンサーを用いた歯科用ディジタルイメージングシステム、歯界展望、90(4):909〜916、1997. |
3) | 黒柳錦也、他:歯科用のディジタルX線イメージングシステム、日本歯科医師会雑誌、47(2):25〜36、1994. |
4) | 大林尚人、他:歯科画像診断の最前線、歯界展望別冊、1997. |
5) | 早川吉彦:ルイビル大学留学を終えて、歯科学報、97(4):406〜412、1997. |